リョーマから梨胡について色々教えてもらった平古場は、一人沈んでいた。
「………何なんですかあれは」
「永四郎、いま凛や傷心中やんばーよ。そっとしといてやれ」
 木手と甲斐の会話に反応することもできず、ただひたすら沈んでいた。
 あの時の不二の目の意味を、平古場は漸く理解した。リョーマは過去形で話していたためおそらく二人は別れているようだが、不二には未練があるように思われる。でなければ平古場に対しあんな目を向けたりはしない。あんな、灼けるような目を。
 何が原因で別れたかは知らないが、梨胡は不二のことをどう思っているのだろうか。
「で、何か進展はあったんですか?」
「凛の姿を見てあると思うか?」
「一応訊いてあげただけですよ」
「…ゆーやら梨胡は一年生の時に付き合ってた男子がいたらしいんやしが、その相手が不二やたんどー」
 甲斐の説明に、平古場は改めて衝撃を受ける。昨夜の二人の姿が思い浮かんだ。
「それはまた…びっくりですね」
「だろー?まあ、似合ってるちゃ似合ってっけど」
「べっ…別に似合いでもなんでもないさー!」
 反抗してみるが、お似合いであることを平古場は心のどこかで認めていた。
「まあ落ち着きなさいよ平古場クン」
 愉快そうに慰める木手に対し平古場は苛立ちを覚えたが、次の彼の言葉でそれは消え去った。
「よく考えてみなさいよ。いくら彼女が不二クンと付き合っていたとしても、それは過去の話。現状、君が付け入る隙はいくらでもあるし、それを止める権利なんて今の不二クンには無いんです」
 言われてみれば確かにそうだ。現在進行で付き合っているなら不二に気を遣う必要だってあるかもしれないが、そうではない。彼のほうが長く梨胡といたとしても今は平古場と大差無い立ち位置にいる。
「これを逃せばもう君に勝ち目はありませんよ」
「ここが踏ん張りどころだぞ!」
 二人の応援により段々勇気が湧いてきた。どんなに嘆いたって現状は変わらない。ならば少しでも梨胡の気を引けるように努力したほうが賢明だ。色々大変だが平古場は頑張るしかなかった。
ラズベリーよりもすっぱい恋


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