涙の珠が、梨胡の白い頬を流れ落ちたような気がした。辺りが暗いからよく見えない。でも、そんな気がした。す、と梨胡の頬を指先で撫でる。生あたたかい粒が皮膚に触れた。次いでびくりと梨胡の体が揺れたが、平古場は己の行動にあまり動揺しなかった。
「好かれるの、怖い?」
 平古場は木手が聞いてきてくれた梨胡の一言を思い出してきた。
 多分梨胡は不二が好きではなかったのだ。“不二を好きだと思っていた自分”が好きだったのだ。そして彼女は中学一年生の時点で己のその浅ましさに気づいてしまった。不二の気持ちを踏みにじったという申し訳なさから、梨胡は別れを切り出したのだろう。きっと、彼女は自分が汚いと思っている。誰かを好きになる価値なんて自分にはないと思っている。
 梨胡はただ息を乱してこちらを見つめていた。暗くともそれはよく分かった。
 可愛い。素直に、思う。自分を責める彼女が可愛くて仕方なかった。いじらしくて仕方なかった。涙があまりにも綺麗だった。不二を思うその気持ちが綺麗だった。
「ひっ………ひら、……」
 悔しさからか、いとしさからか、もうよく分からなかった。ただ脳みそはぐちゃぐちゃに乱れて、心臓の鼓動も乱れて、何もかも乱れて………。
 気づけば、梨胡の腕の中に閉じ込めていた。頭をそっと撫でると合宿内にあるシャンプーの香りと、彼女の優しい匂いがした。
「やー、は」
「…!」
「やーは、悪くないさー。だから――」
 だから―――――何を言おうとしているのだろう。何を口走ろうとしているのだろう。本当に汚いのは、傷心の彼女の隙間に入り込み、無防備なところを無遠慮に撫でている自分なのに。だけどそれが受け入れられなくて、平古場は抵抗しない梨胡に少しだけ罪を寄せ付け、暫くは彼女の体温に触れていた。
毒牙を優しく突き立てて


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