「……」
「……」
「「あの」」
「あっ」「えっ」
「……」
「……」
「な、何。平古場」
「い、いや…やーこそ」
会話が続かない。気まずい空気が二人の間に流れる。
「と、取り敢えず座らね?」
「あ…うん」
部屋の前から離れ、梨胡を近場のソファまで促す。梨胡は素直に平古場の隣に座った。その行動にひっそり安堵する。微妙に距離を置かれては平古場はもう立ち直れない。
しかし、やはりそこに会話はなかった。ちらと梨胡を見てみれば、涙に濡れた睫毛を伏せてじっとしていた。自分よりも華奢な肩をぼんやり眺め、そういえばさっきその小さな体をこの腕の中におさめたのだったと再認識し、またもや心中で自己嫌悪に陥る。恋仲でもない自分がああやって梨胡を慰めるのはおかしなことだというくらい、平古場も知っている。それに梨胡が困惑し、黙りこむのも少し考えれば分かることだ。
「………あの、平古場」
しかし、予想とは裏腹に梨胡は口を開いた。
「な、何よ」
「さっきはごめんなさい」
こちらを見ずにそう述べる梨胡。何故彼女が謝るのか分からず、平古場はえっと声をあげた。
「気を遣わせてごめん、ってこと」
「あ……あぁ〜………い、いやわんだってやーのことを……その……」
「甲斐から聞いた。沖縄の人ってスキンシップが激しいんでしょ?」
「………………………………………は?」
「『凛はお前をただ慰めたかっただけだから、気にしないでくれ』って甲斐に言われた。だからごめん、余計な気を遣わせて。めんどくさい女だったでしょ?」
「い、いやそんなことないさー……はは………やーになだ(涙)は似合わんさー」
甲斐のフォローがありがたいようなありがたくないような……とてつもなく微妙な心境の平古場は、ひくひくと口角を上げるしかなかった。
「……あれ?ということは…っ…裕次郎は知ってんのか!?その、わんがやーを、だっ抱き…しめたこと……」
「あ…うん。ごめん、甲斐に目が赤い原因を聞かれたから………口が滑った」
どうか永四郎たちには言いませんように、と部屋にいる甲斐に心の中で手を合わせる。
「とにかくありがと…それと、ごめん」
「あっ謝るなって!!」
つい声を荒らげると、梨胡はびっくりしたように目を見開いた。しまった、と肝が冷えたが梨胡は気にしなかったのか怯えた様子はなかった。それから二言三言喋り、二人は立ち上がった。
「おやすみ」
「ああ…おやすみ」
目尻が赤いのが痛々しいが、梨胡の表情は吹っ切れたように晴れやかだった。それがなにより、平古場を安堵させた。
そのあたたかさに生かされている
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