「で、夜になりましたが凛クンよ」
「ぬ、ぬぅよその喋り方」
「裕次郎気持ち悪いやー」
 知念の適切な発言に甲斐が「ひでーな!」と悲しそうな顔で言う。
「いやそうじゃなくて!!凛!やーは一体何やってるよ!!」
「は?」
「もう四日目の夜ですけど?!」
 行動がとろい!やーはカタツムリか!だなんて喚く甲斐に、平古場は顔を引き攣らせる。
 明日一日過ごせばその翌日の早朝に比嘉の面々はこの場を去ることになる。当たり前だ、地元が一番遠いのだから。他の学校はところによっては昼頃まで行動を共にする学校もあるだろう。畜生羨ましいなと歯軋りする。
「アナタはこの四日間何してきましたか」
「えっ…?」
「梨胡との距離を縮める為に何をしてきたかって訊いてんだよ!!」
 甲斐の言っている意味がよく分からず首をかしげる。随分努力してきたではないか。「やー…まさかあの程度で満足してるんじゃ…」驚愕の表情を見せる甲斐。
「なー(名前)すら呼べてねーんのに満足してるんだ…」
 知念でさえも目を瞬かせて平古場を凝視する。
「なっなー…とか…呼べるわけねーん」
「はい出たー!!“恥ずかしくて呼べねーんはぁと”」
「何がハートよ!!」
「やーの恥ずかしがる姿見ても誰も得しねーんよ」
 ごみでも見るような甲斐の凍てつく目に、流石の平古場も黙り込む。
「連絡先だって交換してねーしよー」
「うっ」
「帰ったらどうやって梨胡と連絡取るつもりだよ」
 言い返す言葉もない。甲斐の正論に平古場はひたすら頭を下げることしかできない。
「つーわけで」
「?」
「今から行ってこい!!」
「どこへ?!」
「梨胡ンとこ!!」
もう心臓は潰れそうだ


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