暗くなった室内で、ぼんやり見えるシーツの皺を眺めながら平古場はこっそり溜息をついた。時刻は丑三つ時。もう誰も起きてはいないだろうが、自然と息を潜めてしまう。自分の体温で暖かくなった布団の中に潜り込み、平古場はぎゅっと目を瞑った。

(仲良く、なれたのか?)

 この合宿期間、梨胡と話した回数はどのくらいだっただろう。梨胡の目に平古場はどのくらい映っただろう。
 考え出してはきりがない。
「さっさと寝なさいよ」
 突然聞こえた低い声に平古場はぎょっとする。
「な………やー、起きてたのか」
「君もね」
「……………、」
「早く寝たらどうですか」
「…できるならそうしてる」
 不貞腐れて枕に顔を埋めれば、大きな溜息が聞こえた。それはこちらがしたいものだ。
「そういえば連絡先を交換したんですか?」
「……してないやぁー」
「はぁ…まったく君は」
 やれやれと言う木手。「もういいから寝なさい」呆れた口調に平古場は今度こそ強く目を瞑った。
世界はあなたの色になる


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