「平古場!!!」
バスに乗る、直前だった。
「! ……え、越前…!?」
「はぁ、は………あれ、名前で呼ばないんだ」
なんと梨胡がいた。膝に手をついて息が荒い。慌てて走ってきたのだろう。とはいえいつもの余裕そうな口調は変わらない。
「ど、どうしたんだ…?」
「忘れ物、届けに来た」
「忘れ物…?」
はい、と渡されたのはある小冊子。
「………………………しおり?」
「うんしおり」
比嘉の部屋を最後点検したら出てきた、と何でもない感じに述べる梨胡。「あ、ああ…ありがと」「どういたしまして」正直ちょっと…いや、かなり期待した。何かいいものでもくれるのかと。少しでも平古場を気にかけてくれるのかと。
「じゃあね」
「ああ…じゃあな」
ちょっと落胆しながらも笑顔を取り繕って平古場は今度こそバスに乗った。
「うぅ………」
耐えられず、半端じゃないくらい落ち込んだ。きっと梨胡は何でもない風に残りの仕事に励んでいるだろう。はぁ、と溜息をついて渡されたしおりを開けた。
「は、……………?」
見慣れない数字と英文字の羅列があった。何だろうこれは。一体何を意味するのか、平古場は暫し考えた。アットマークがついている。もしやこれは、メールアドレスだろうか。しかし、誰の?
「おや良いですね」
突然背後から降りかかった声に、ぎょっと肩が上がる。
「それ、大事にしなさいよ」
「は!?」
まさか、もしかして…と、そんなことあるわけないのに想像してしまう。周りを見れば全員がニヤニヤして「良かったなー凛」と声をかけてきた。
平古場は慌てて携帯電話を開いた。
世界はあなたの色になる
← |
→戻/
top