第一印象は大事、だけれども


「お前何やってんの馬鹿なの馬鹿なんですかァ!?」
「どうしました坂田さん。あっもしかして花はお嫌いなんですか?」
「まさかァァァァそんなわけないじゃないですかっ!花は老若男女、どんな生物にも愛される聖女のような存在じゃないですかァははは!!」
 帰りたいなら素直に帰りたいと言えば良いのに、と燕は思ったがわざわざ助け舟を出そうとも思わなかった。
 店内は植物で賑わっていた。普段植物に囲まれることのなかった燕は新鮮な気持ちになる。隣でそわそわしている銀時の足を踏んでから、燕は屁怒絽に訊ねる。
「仕事場に飾るための花を探してるんですが、おすすめはありますか」
「ああ仕事場ですか、良いですねェ、花は人の心に安らぎを与えますから。そうですね…色で言うなら黄色やオレンジ、淡色などが安らぎを感じますからそういうお花が良いですか?」
「そうですねェ、あと手入れが簡単なほうが良いんですが…」
「それならハーブ類や多年草とかおすすめですね。あ、ポーチュラカだったらカラフルな花をたくさん咲かせるし、水もそんなにやらなくても大丈夫ですよ」
 一方、完全に疎外されている銀時。和気藹々と話し込んでいる二人に彼は冷や汗を流した。何だろうこの孤独感。何だろうこの寂しさ。
 銀時は店内に設置されているイスに座った。この二人の会話はそう簡単に中断されそうにない。どうせ俺なんて…とひねくれながら彼らを見つめた。植物を選んでいる燕の横顔は真剣そのもの。たかが花選びで、と銀時は思ったがふとある人の言葉を思い出した。

『花はね、美や生命力の象徴なのです。花は儚いですよね、でもその短命の中にこそ、束の間の栄華・華やかさが美しく感じられるのです』

「…じゃ、これでお願いします」
「ありがとうございます、お包みしますね」
 どうやら決まったらしい。燕がお金を出すところを何気なく見、銀時はまた想う。
 似ている、と。
「万事屋さんまだ居たんですか」
「なにそれ酷い」
「万事屋さんは何か買わないんですか」
「買わねーよ花なんて」
 儚いものなど欲しくない。それが正直なところだった。
 銀時の返答を特に気にすることなく「そうですか」と答えると、燕は包まれた花を屁怒絽から受け取った。何を買ったのかと訊ねると、屁怒絽から勧められたポーチュラカを買ったと言う。
「ポーチュラカの花言葉は“いつも元気”または“無邪気”。霧島さんが元気にお仕事できるのを僕も祈っています」
「ありがとうございます」
「へっ、こいつに元気とか無邪気とか似合わないことバフゥ!!」
「済いやせん手が滑りました」
 容赦ない手刀が銀時の鳩尾に直撃する。しかし悪びれる素振りもなく、燕は屁怒絽に一礼して店内を出た。
「ちょ、なんなのお前。ホントに俺に恨みでもあんの?」
「万事屋さん、何で屁怒絽さんのこと怖がってるんですか」
 彼の質問に答えず、質問を重ねる燕。急に何だと銀時は眉をひそめた。
「だって怖いじゃん」
「それでも大人ですか、話してみたら案外良い人じゃないですか」
「いやあいつは地球を侵略しに来たんだ、そうに違いない」
「…万事屋さん、第一印象は大事って言いますけど、ちゃんとあの人のこと、理解しようとしたほうが良いですよ」
 燕は脚を止め、銀時を見据える。
「あっしの父が言ってました。『どんなに怖い外見だったって、心の優しい人はいます。私は鬼だ何だの怖がられてきた子と出会いましたが、本当はただ寂しがっていた可愛い子だったのです』って」
「…は?」
「経験談ですよ、父の」
 ざわめく。銀時は狼狽する。だがそんな彼を気にすることなく燕は別れの挨拶をしてその場を去った。
prev | top | next
back