みんな知らないところで誰かに護られてる
この日、源外は出払っていた。燕は部屋にある特殊なパソコンに自分のパソコンを接続して操作をしていた。部屋にはキーボードを打つ音と燕の呼吸音しか聞こえない。
「……」
噛みつくように画面を見つめていたが、おもむろに彼女は上体を起こして息をつく。相当疲労を滲ませている。眉間を揉んで、席を立った。
お茶を湧かして考える。どうやるべきか、誰にも迷惑をかけずにするには何をすれば良いか。
「…駄目だな」
はあ、ともう一度息をついて頭を振る。流石に一人で事を動かすには限度というものが存在する。
燕は外に出る。ぐくっと関節を伸ばして体をリラックスさせた。ずっと画面とにらめっこしているのはやはりつらいものである。少し歩くか、と燕は考える。パソコンは既に切ってあるので誰かに見られる心配もない。さっさと店を閉めて歩き出した。
歩きながら燕は目玉だけを動かして辺りを観察する。最近誰かに監視させているような気がするのだ。
「……」
気づかれている?燕の胸にひやりとしたものが生まれる。頭の中でこれまでやってきたことを思い浮かべる。しかしミスをしたところを見つけることはできなかった。
「よーっ燕!」
不意に呼ばれ、燕は足を止める。
「ああ…万事屋さんですか」
「?…なんかお前疲れてない?大丈夫?」
「第一声がそれですか。別に大丈夫です。万事屋さんほど人生に疲れてませんから」
「テメっ…俺のことどんな風に見てんだよ」
偶然遭遇した銀時は、時折燕ではない別のところに視線をやりながら会話をする。何か感じ取っているのだろうか。
「誰かの視線を感じますか?」
「へ!?」
「最近…誰かの視線を感じてましてねェ。まァ、あっしの自意識過剰なら良いんですけど」
「自意識過剰も嫌だろ……や、まあ…危ないモンじゃねーから大丈夫だろ」
「そうですか?」
僅かに首を傾げると、銀時は「あんま心配すんな」と言って燕の頭を撫でた。その行為に燕は目を見開く。
「ちょ…天パが移るんでやめてください」
「お前本当に辛口だな」
一通り世話話をして、燕はそろそろ帰ると言って踵を返す。銀時の奇妙な視線を背中で受け取りながら、早足に帰路についたのであった。