思ったよりも人はあたたかい
「何でィつまんねーな」
「つまんなくねーから。割とまともだから」
“でも燕さん、あまり気を遣わないでください。私はあなたを護れなかったのだから”口喧嘩をする沖田たちの声など耳に入っていないのか、斉藤は気にせずに会話を進める。彼にとって右腕や首の傷は余程堪えたのだろう。しょんぼりする彼に、燕はびっくりする。
「護ってくれたじゃないですか。貴重な有休まで使って、駆けつけてくれたじゃないですか」
「…」
「あんな綺麗な着物を破いてまで止血してくれたじゃないですか」
それでも斉藤の眉はハの字をやめない。
「あ、じゃあこうしましょう」
「?」
「今度、あるお店で二組でしか参加できないケーキバイキングがあるんです。それに付き合ってください」
「おおー!それは良いじゃないか!終、是非行ってきなさい!」
バシバシと彼の背中を叩いて近藤は促す。そんな様子に燕は顔が綻ぶ。するとどうしただろう、斉藤は耳まで真っ赤になった。彼の隣でニヤニヤしている沖田が気になったが、燕は追求しなかった。
気を取り直し、燕は今度は近藤に体を向ける。
「あの……あっし、将軍様にもお世話になったので何かお礼がしたいんですが…」
「ああ、その話は聞いてるよ。万事屋のチャイナと新八くんが呼びに行ったっていう」
「はい」
「気にしなくて良いんじゃねーか?」
何でもない風に、土方は述べる。
「お前を助けに行く時、将軍は周りの者に止められたらしくてな…だが民を守るのは当然だって言って皆の反対を押し切りお前を助けに行った。将軍にとってそれは当たり前のこと。礼を言われるほどのことじゃない。…が、それでも礼がしたいなら現将軍がこの国を導いてくれると信じてやれ。それが一番の礼だ」
「…そう、なんでしょうか」
俯く燕に、近藤は微笑む。「信じるっていうのは、実はとても難しいことなんですよ。燕さん」彼の言葉に燕は眉をハの字にして微笑した。
「ところでどうですかィ霧島さん」と、ここで空気を変えるように沖田が話しだす。
「はい?」
「終兄さんのことですよ。結構良い物件だと思うんですけどねェ」
「あ…(物件?)そうですねェ……とても親切だし奥ゆかしいし」
少し照れて燕は言う。――お?これはもしや脈アリか?――その場に居た全員がそう考える。
「…――とても良い友達を持ったと思ってます」
「「「え…?」」」
はにかんでそう言った燕はとても嘘をついているようには見えない。
「…あーあ、こりゃァ先は遠そうだねェ」
「え?」
「霧島、お前結構バカなんだな」
「へ?」
「斉藤隊長、ファイトです!」
「そうだぞ終!障害がある程燃えるんだ!」
「あ、あの…?」
何の話をしているのか分からない燕は、ただ首をかしげる。
一方の斉藤は友達と答えてくれた燕に対し嬉しい反面、男として見てくれていない悲しさが入り混じって複雑な心境であった。