村塾組と飲み会


「いや…色々おかしいんだけど。ナニコレ何でおめーらがいんの?」
 某日、銀時と燕は二人きりですき焼きでもしようかという話になった。たまには子供らを除け者にして積もる話をしようじゃないかとなったのだ。だから子供二人を志村家にどうにか押しやり、夕方頃すき焼きに必要なものを買い、ついでに酒も買い込んで万事屋に帰ってきたのである。
「遅かったではないか銀時」
「とっとと準備しやがれ」
 なのに何故、我が家で指名手配犯二人が寛いでいるのだろうか。
「万事屋さん、桂さんと高杉さんを呼んだんですかィ」
「んなトチ狂ったことしねーよ」
 銀時は至極嫌だが、燕は満更でもないようで状況を受け入れてさっさとすき焼きの準備を始めた。順応力高すぎィ、と銀時は言うが燕に馬鹿言ってないで手伝えとあしらわれた。
 流石一人暮らしとあってか燕のおかげで手際良く準備を進め、あっという間に肉はたまごの中に入った。
「うめ〜すき焼きなんていつぶりよ…」
「クククそんなに貧乏なら金貸してやろうか?」
「間違ってもテメェに金は借りねえ!つーか何でそんな当たり前のように肉食ってんの?この肉、俺と燕が割り勘して買ってきた肉なんだけど!」
「なに割り勘だと!?銀時、貴様それでも男か?おなごに金を負担させるなど男の風上にもおけぬ」
「いいよねテメェらは人の金で肉食えて!そう思うならすき焼き代取り立ててもいいかな!?」
 本来なら燕ともっとのほほんとすき焼きパーティーができたというのに、よくも邪魔してくれたなと銀時は歯軋りする。が、そんな銀時など露知らず、燕はせっせと皆をもてなす。
「万事屋さん、お肉入れやしょうか」
「え、ああ頼む」
「桂さん、たまごもう一個入れたほうが良いんじゃないですかィ」
「む、そうだな」
「高杉さん、グラスが空いてやす。注ぎます」
「ああ」
「万事屋さん、そろそろ次のお野菜入れて…」
「ちょっと待て燕ちゃんンンン!!」
 ストップを入れる銀時に燕は不思議そうに首を傾げる。
「すいやせんまだ早かったですかィ」
「いやそうじゃなくて!そんな俺たちに気ィ遣わなくていいよ!燕さっきから全然食ってねーだろ!?ほら肉食え!」
「はあ…でも万事屋さんお肉久しぶりなんでしょ?あっしに気ィ遣わずにたくさん食べたら…」
「そんなん言われたら逆に気ィ遣うわァァァァァ!!!」
「…………燕」
 それまで黙っていた高杉が不意にビール瓶を持つ。「グラス」言って、燕のグラスを顎で差す。それに察した燕がありがとうございますと言ってグラスを傾けた。注がれるビールに銀時は(こいつ、気遣いとかできたのか…)と高杉の新たな一面に感心する。それを感じたのは銀時だけではなかったようで、桂もほうと声を上げて驚いていた。
「高杉もそのようなことができるようになったのだな…よし燕殿、俺はそなたに卵を割ってやろう!さあ器をこちらへ!」
「どんだけ割るつもりなんだテメェはァァァァ!!!」
 両手いっぱいに卵を持つ桂に銀時がつっこむ。そんな一気に使ったらあっという間に無くなってしまう。
「そういや燕、注いでおいて今更なんだが……お前さん、酒飲めるのか?」
 高杉の質問に銀時も桂も動きを止めて燕を見る。
「へえまあ…お得意様と飲む機会があったりしますし、おやっさんともたまに飲みます」
「マジかあのジジイ!」
 俺を差し置いて、と銀時は悔しがる。だから怪しく光る高杉の目に気づかなかった。
「…燕、勝負しねえか?」
「飲み比べ、ですかィ」
「負けたほうが勝ったほうの言うことを一つきく、っつーので」
「はあ、良いですよ」
「待て待て待て!明らかに燕殿が負けるではないか!」
「大丈夫でさァ桂さん。あっし、結構強いんで」
「ほう、そりゃァ楽しみだ」
 こうして銀時を放って飲み比べが始まった。
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