いや他人の恋に関わると碌なことないからね


 “拝啓、万事屋さんへ。
 お元気でしょうか。いつかの時、あなた方に私の悩みを解決していただいた公務員Zという者です。
今回、私は重大な問題に直面してしまいましたZ。これを是非とも解決していただきたく筆を取らせていただきましたZ。
 実は私は、先日から体の様子がおかしいのです。きっかけはコンビニでした。正確にはそのコンビニである女性を見かけた時から、体に支障がきたし始めたのです。その女性を一目見た時から、心臓が苦しくなり、更にその女性が男共に襲われた瞬間を目にしてしまった折、ほんの一瞬だけ我を忘れてしまったのです。しかもその症状は今も続いていて、気づけはその女性のことをいつも考えてしまう始末。あの人の瞳が忘れられない、あの人の表情が忘れられない……これでは仕事もはかどりません。私は一体どうしてしまったのでしょうか、医者に診てもらっても分からず困り果てています。どうか教えてください。是非ともお返事待ってます。公務員Z”

「恋だな」
「恋アル」
「恋でしょう」
 某日万事屋に届いた手紙。それはリア充爆発しろと言わんばかりの内容であった。銀時はそれを面倒ながらも読破し、やってらんねーと手紙を置く。
「斎藤さんが恋、ですか…」
「あのアフロがねぇ」
「どうするアルか銀ちゃん」
「今回もたんまり依頼料入ってやがるし…協力するしかねーだろ」
 ダルそうに言う銀時に、新八は不安がる。この人を恋の相談者にして正解なのだろうか。もう少し人を選んでください斉藤さん、と新八は無口な彼を想う。
「まず相手が誰かから始まるな」
「訊いてみれば良いアル」

 “公務員Zさんへ。
 ずばり申し上げますと、あなたのそれは恋の病です。体の不調を治したいのであればその恋を成就させるか諦めるしかないでしょう。とは言ってもまだまだ序盤、あなたは全く相手のことを知らないので、まずその女性を知って、取り敢えずもう一度会ってみましょう。そこから成就させるか諦めるか決めても遅くありません。
 まず、あなたはその女性のことをどこまで知ってるのですか? 万事屋”

 “万事屋さんへ。
 実はまったく知りません。どこに住んでいるのかも名前も知りません。 公務員Z”

「リア充爆発しろォォォォォォォ!!!」
「銀さん落ち着いてェェェェェェ!!!」
 せっかく来た返事を破り捨てそうになっている銀時を必死で止める新八。
「なんだコイツ!名前も知らねー奴を慕ってんのかようぜーよムカつくよ!!」
「漫画並みのステータスアルな。きっとこれからどっかの街角でぶつかって再会を果たすヨ」
 仕方がないので彼らはその女性の特徴を記してくれと手紙を送り、二日後に彼からの手紙を受け取った。
 地道な調査が始まった。 
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