彼のおなまえ
ちらりと隣の彼の方を見ると、頬杖をついて窓の外を見ているようだった。
対する私は、机に伏していた。
――お父さん、お母さん、そして校内のどこかにいる兄さん。いつものことながら、私は今日も朝から転びました。いつものことではあるんですが、今日はそれになんだかすごく、嫌な予感がします。
教室内で盛大に転んだ時。さすがに恥ずかしくて真っ赤になってしまった。隣の彼は呆れたように溜め息をつき、「残りはあとで聞くから、座れ」と言って席についた。同時に消しゴムを投げた男の子が謝りに来て、その後には先生の話が始まった。朝から連続で転ぶ上、お礼一つ言うだけのこともできないなんて、私今日ほんとに厄日なんだろうかと思う。
そして始まった1時間目は自己紹介の時間。そういえば昨日、そんなことをしますと言っていたような気がする、ような気がする。私は血の気がひいた。だって何も考えていない。それもそのはず、今聞いてようやく思い出す程度にしか昨日の話を聞いてなかったから。
考えてきたことをたくさん話せなんて言われてたらどうしよう…なんて心配していたが、どうやら杞憂に終わってくれたらしい。私達の担任の人はどうもあっさりしているらしく、自己紹介と言っても、名前、出身校、あとは趣味とか特技とか好きなものとか入りたい部活だとか、何か一つ選んで話せばいいらしい。とりあえず良かった。
五十音…の逆から行くらしく、私の番はまだだった。そうして一度安心した私は、安心して落ち着いた上で、更に緊張することになった。
「じゃあ次、剣城ー」
「…はいよ」
彼の番だった。ここでようやく、私は彼の名前を知ったのだ。
「剣城京介、――」
剣城、剣城京介、くん。名前以外のところを聞き逃してしまったけど、気にならなった。名前がわかっだけでよかった。次に話しかける時には、ちゃんと名前で呼べる。
「……りの、霧野!」
「え、あ、は、はい!」
けど、剣城くんの名前に気を取られ過ぎていたらしく、自分の番がきていることに全く気づかなかったせいで、何回か名前を呼ばれていた。慌てて立ち上がって返事をした。
「お前の番だぞー」
「すすすすみません」
「おう、とりあえず落ち着いてやってくれよ」
「は、はい…」
先生に軽く励まされてしまった。やっぱりさっき転んだの見られていたのだろ…ううん、やっぱり考えるのよそう。
「霧野なまえ、雷門小学校出身です。好きなものは、ピアノです。よろしくお願いします」
「……霧野?」
隣で彼が少し、目を見開いたような気がした。
自己紹介が終わると、ちょうどチャイムが鳴ったところで。次の時間のオリエンテーリングまで少し準備があるらしく、長めの休み時間になった。
よしっと気合いを入れて剣城くんの方を向くと、私が話しかける前に声を掛けられて驚いて。
椅子から、落っこちた。
「うわあっ」
「………朝からお前…大丈夫か」
「すみません…昔、から、なんです」
かあああっと顔が熱くなる。椅子に手をかけて立ち上がってから、否応なしに思う。
――私、今日中にちゃんとお礼を言えるんだろうか。
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企画消化更新
11/12/31
(修正・12/03/06)