一緒に住むなら。そう、これは仮定の話だよ。と前置きした上で彼女に投げかけた話題にはさして意味など無かったのだけれど。
「一軒家か……それかアパートなら一階がいいです」
「どうして?」
「太宰さんが窓から飛び降りても死なないように」
それぞれのメリットを脳内で箇条書きにし、さてどれに当てはまるかな、なんて遊戯じみたことをしようとしていた太宰は、彼女からの思いもよらない返答に喉を詰まらせる。一軒家なら自由度が高いとか、その辺りと同列に理由を置いた彼女の黒い瞳は、自然光を吸い込んで普段と何ら変わらずきらきらとしていた。
あなたの『生』を願うことはあなたにとって苦痛ですか?
まるで濡れた葉から雫が滑り落ちるように彼女はぽつりと言葉を繋げる。
生きていてほしいと願われること。性懲りもなく死へと手を伸ばし続けること。綱引きでもしているみたいに互いを引っ張り合っている。均衡が崩れることはあるんだろうか、と考えて、均衡していると思っている自分に驚いた。
「苦痛か、苦痛じゃないか……私を返答に困らせるなんて、なかなかどうして君も侮れない」
少なくとも彼女の願いは太宰にとって、軽々しく扱っていいようなものではないのだと。