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「よお牧野、今日場地さん居るか」
「今日居ないよ〜……えっ、どうしたのその顔」
「居ねえならいい」
「まあ待ちなって」

 十月の半ば、松野がボコボコの顔で教室を覗きに来た。しかもいつもより気が立っていて、いつもより素っ気ない。イライラしていそうな割に、やけに静かだった。どう見たって尋常ではないその様子が当たり前に気になってしまって。機嫌も悪そうに「ンだよ」と睨んでくる松野の腕を掴んで、ニコニコと笑いながらも引き止めたのだ。
 正直「テメェ握力どうなってんだ牧野!」とか吠えられても知らないことだった。ギャンギャン吠える不良男子を引き留めようとしているのだから、それなりに力を入れているだけだし。そもそもの話、去年の体力テストの握力項目で私が満点を叩き出したことは松野もよく知るところなはずだ。誰がゴリラ女だよ黙りな。

「ノキさーん!!! 松野の顔ボッコボコなんだけど!?!? 何!?!?」
「何で宮軒呼ぶんだよ!! やめろ!!」
「ウワ〜……痛そ。雑魚?」
「しかも何で来るんだよ!!!」
「マキに呼ばれたら来るよそりゃ。いくら用件が松野でも」
「テメェ宮軒……! 一回はオレのこと罵倒しねえと喋れねえのか……!!」
「ノキちゃん吹っかけないでね〜松野君もうるさいよ〜」
「……ッチ、」
「何? 松野千冬君」
「…………何でもねーッス、ミキサン」
「ザッコ」
「……ヂィッッッ!!!」

 ノキさんとの喧嘩をミキさんが止めてからも流石にかなり気になって。「うるさいから爆竹鳴らさないでね」なんてことを言いがてら少し聞いても「何でもねえ」「ただの喧嘩」としか教えてもらえなかった。

 ──それと同じ頃くらいから、場地がそれまで以上に学校に来なくなった。
 たまに登校しているところを見かけて声をかければ、一瞬凄まれたあと「悪ィ、オマエか」なんて謝られる。図らずも初対面の不良がたくさん居た集会に顔を出すことになってしまった以上、絶対に私に殴りかかってこないという信頼がある場地の凄み自体は特に気にならなかったのだけれども。聞けばどうも、抗争とやらが近いらしい。そのせいでピリついているとか。

「程々にしなよ。松野もだけど」
「……アー」
「またダブるよ。来年は後輩かな」
「微妙にヤなこと言うのやめろや」

 ──まあ、普通に喋るのだ。これが。

 普通に喋る中でも、どことなく嫌な予感がした。『ただの喧嘩』にしては異様だと言う他ない程に顔がボコボコになった松野が場地を探しに来たタイミングと、場地が抗争前とやらでピリついた挙句、教師以外でも誰彼構わず凄むようになったタイミングはほぼ同じなのだ。

 松野は去年には『誰にも負けねえよ』と豪語していたはずで、場地はその松野が分かりやすく懐くくらいには『かっけえ』らしくて。不良が言う『かっけえ』の基準に、喧嘩の強さが入っていないわけもない。
 そもそもあんなに厳つい集団の中で、場地の腕には『壱番隊隊長』なんて文字が刺繍されていたのだ。あの雰囲気の集団のひとつを纏める立場にある以上、場地が情けない喧嘩をするはずもない。つまるところ、もしかしたら、なんて話だ。

 確信を持ってそうだと決めつけるには、私自身があまりに内情を知らず。絶対にそんなことはないと言い切ってしまうには、状況証拠がありすぎる。
 松野の名前を出したとき、咄嗟に濁そうとした辺りもそうだ。松野のあの怪我に、場地が関わっていないはずもない。二人目が喧嘩したからこその松野のあの怪我なのか、それとも単に、場地は他の何かしらで関わっているだけなのか。そこまでは流石に分からないけれども。

 もしも本当に場地と松野の喧嘩だったとして。松野が言うような『ただの喧嘩』なのであれば、外野の私があれこれ考ることではない。拳を交えなければ深まらない友情だって、あるにはある。
 ただ、それでも。未だ派手な傷跡の残る松野の顔とは対象的に、場地の顔は瘡蓋ひとつない綺麗なままな辺りが、どうしても気にかかる。──本当に『ただの喧嘩』なのであれば、場地の方にももう少し喧嘩の痕が残ってもおかしくはないのに。これだとまるで、一方的に松野だけが殴られたことになる気がして。

「そういえば、」
「ンだよ」
「この前体育祭だったんだよね。場地は来なかったけど」
「ハ? ……マジ?」
「えっ、本気で忘れてたの!? 私男女混合縦割りリレーで勇者になったんだけど!?!?」
「すげーな。しかも縦割りかよ」
「びりっけつでバトン貰ったんだけどね、陸上部ばっかりの中で男子の先輩もごぼう抜きにしたんだよ。我ながら天下取れるくらい格好良かったんだから」
「……行きゃあ良かったワ」

 それでも、ただのクラスメイトでしかない私が何かを言ったところで、素直に聞き入れることはしないだろう。だって、話せば普通に良い奴だと思うけれど、本当にただの『普通の良い奴』であれば無免許ノーヘルでバイクなんて乗り回さないし、そもそも不良にもならないのだから。

「……見たかった?」
「そりゃな。一人だけエンジン積んでる奴が混ざってンのとか絶対ェおもしれーし」
「あだ名バイクはやめてって言ったよね? 可愛くない」
「……そうか? オマエはバイクでもかわいーだろ」
「供給過多です。加減してください」
「だから何だよそれ」

 あんまり無遠慮に深入りすると、明らかに松野を避けている場地に、私まで避けられてしまうかもしれない。それだけはなんとなく、というか、どうしても嫌だった。「待ってたんだよ。皆で写真とか撮りたかったのに」と言えば、バツが悪そうに「マジで悪かったって。来年な」と返してくれるこの温い関係に亀裂が入ることだって、嫌だった。

「場地」
「あ?」
「バレンタイン、楽しみにしててね」
「……は?」
「友チョコ! とびきり美味しいやつ作る予定なんだよね」
「友チョコ……」
「うん、美味しいの作るからね。期待してくれて良いよ」

 だから、全てに見ないふりを決め込むことにした。話題を変えがてらペカっと笑えば、謎に動きを止めていた場地は目元を覆って溜め息を吐いて。それから無言で髪をぐちゃぐちゃにされる。しかも両手だ。

「え、珍し。場地に子供扱いされた。久々じゃない? 最近そんなにしてこなかったのに。や、最近全然会ってないからそう思うだけかも……?」
「ガキ扱い……っつーか……」
「何て? ってかそろそろ終わってよ。場地のせいで髪ぐちゃぐちゃなんだけど」
「……もうそれで良いワ」
「はー!?」

 それからしばらくそのまま話して。ようやく頭から離れた手にブツブツと文句を垂れながら髪を直していれば、思い出した様に「そういや、」なんて声が聞こえたから。ジトっと平べったい目で場地に視線を移したのだ。

「……一個だけ聞いていいか」
「良いけど。答えられることにしてね」
「……オマエ、バイク乗ったことあるだろ」
「…………さあ、どうだろう。どう思う?」
「絶対ある」
「はは、目敏いなあ」

 ある種の確信を持った雰囲気でそんなことを言われたから、まあ、流石に分かるよなとも思ったのだ。そもそもの話、バイクに乗るためには重心を合わせる必要がある。後ろに乗っているだけの人でも、重心がおかしければ事故の元だ。重心がおかしくなかったとして、運転している側がそれに気付かないはずもない。初めて乗った、みたいなことも言った以上、違和感を覚えない方が難しい。

「っつーことは……アレも嘘か」
「……どれのことか分かんないけど、夜の海が初めてだったのも、後ろに乗せてもらったのが初めてだったのも本当だよ」
「……は? ……ならそーいうことか?」
「多分? ナイス推理。流石火サスフリークってところ?」

 頭を抱えて「そりゃ……」とか「『人の中身なんて見た目では分からない』ってそういうことかよ」とか「にしても程があんだろ……」とか。まさか現役ゴリゴリの族にそこまで言ってもらえるとは。覚悟を決めて中学デビューをした甲斐もあるというものだ。
 場地、私と話したこと結構細かく覚えてんだ、なんてことを考えつつも、かなりの研究と努力で手に入れたみずみずしい髪を手櫛で直しながら「どうも」なんて笑って。やっぱり黒髪に戻して良かったな、とあまり進んで思い出したくもない記憶に蓋をしていれば、小さく「さっきの」なんて声が聞こえた。

「何」
「楽しみにしてっから」
「はぁ? 何が」
「何でそんなキレてんだよ」
「この髪の惨状見てから文句言って」
「さんじょう」
「来年は後輩だね。一応予告しておくけど、牧野先輩♡ って呼ばないとキレるから。普通に」
「やめろマジで」
「男子から先輩って呼ばれるの実はちょっと憧れてるんだよね。塾があるから部活も入れないし」
「……牧野センパイ?」
「ウワー……場地に呼ばれるのは嫌かも……」
「オレも嫌だワ」

 その場は気安いよっ友が厭に真面目くさった返しをしてきたから、微妙な気恥しさを覚えて流してしまったのだけれど。顔を見合せて、二人して吹き出して。他の全てを忘れて、それぞれに目を細めながら穏やかに笑っていられた。

 ──あのときは確かに、そんな空気感で、どうでもいい話ができていたはずなのに。
 十一月に入って初めての平日。登校したら、例のよっ友が死んだと聞いた。

「は?」

 いくら詳細が気になろうとも、一番知っていそうな松野はそれからしばらく学校に来なかった。嫌でも耳に入ってくる噂は、松野でもない人からの話だから信用できない──というか、信じたくなくて。
 場地が学校に来ないのはいつものことであるし、きっといつかまた思い出した様に顔を出すはずなのだ。心のどこかではそんなことが起こるわけもないと分かっていても、どうしたってそう思い込みたくて。結局、新聞のお悔やみ欄は一度も見られなかった。

「よォ牧野」
「……おはようサボり魔。もう昼だけど」
「ちょっとツラ貸せよ」
「せめて放課後まで待てないかな」
「はァ? 今来い」
「せっかく学校来たんだから授業くらい受けな」
「授業なんかより大事な話だ」
「そうなんだ。放課後にまたおいで」

 そこは流石に頑として譲らなかった。松野の用事はなんとなく分かっていたし、そもそも学生の本分は勉強なのだ。松野の用事をなんとなくでも察してしまった以上、今日のこの後の授業に身が入るかと考えれば、多分無理なのだろうけれども。だからといってサボって良い理由にはならない。それを、サボる理由にしてはいけない。
 窓枠に肘をついて教室の中を覗き込む松野の方に視線は向けず、声も特に荒らげることなく、いつも通りに淡々と。しばらくそんな調子でやりとりをしていれば、松野は爆竹みたいな舌打ちをお見舞いしてくれた挙句「絶対ェ逃げんなよ」「逃げたら殺す」と吐き捨てて自分のクラスに帰って行った。わざわざそこまで言わなくても逃げないのに。──もう、逃げられないのに。

「乗れ」
「このバイク、」
「……貰った」
「そうなんだ」

 どうか放課後なんてもう永遠に来るなと願い続けたのに、とうとう放課後は来てしまった。宣言通りに教室まで顔を出した松野に学校近くの駐輪場まで連れて行かれて、どう考えても見たことがあるバイクに『乗れ』とまで言われてしまったからには、軽く目眩を覚えた。

「捕まるの、どこにすればいい?」
「はァ? 乗ったことあるだろ。教えてもらったんじゃねえのかよ」
「……そのときの捕まり方、やっていいの」
「……あー、先に聞く」
「腰に腕巻き付けて後ろから抱き着くやつ」
「……絶対やめろ。横のバー持っとけ」
「はは、やっぱそうだよね」

 それからしばらく走ったバイクは、渋谷の霊園に辿り着いた。「こっち」と言った松野に大人しく着いて行った先にあったのは──見れば分かる、おそらく場地が居るであろうお墓だった。

「線香、持ってないよ」
「オレが持ってる」
「お供えものもないよ」
「場地さんはそのくらいでキレねえよ」
「ふふ、どうだろうね」
「……少なくとも、牧野には怒んねえよ」
「そうなんだ」

 それからぽつぽつと話し出した松野の声を、どこか現実味のないままに聞いた。「抗争で」なんて言葉が聞こえてきた以上、ああ、それは知ってるなと思ってしまったのだ。だってこの間、場地本人が抗争前で気が立っていると教えてくれたから。
 それでも、まさか命のやり取りをする程の喧嘩だとは思っていなかった。せいぜいが仲良しのお友達とヤンチャをして、肩肘張って、たまにぶつかった他のグループと全力で殴り合いをして。警察に捕まらない程度の、死なない程度のものだと、思い込んでいた。元々、進んで深くを知ろうとはしていなかったけれど、本当になんにも知らなかったんだな。そこまで考えたときに、そういえばと思ったことがそのまま口をつく。

「あ」
「……何」
「私、場地の連絡先も知らなかったんだって」

 ──思って。

 立ったままに「帰る」と呟いた声が、場地のお墓の前でしゃがみ込んでいた松野に聞こえたかどうかは分からない。それでも早くこの場を離れたくて、もう松野と居たくなくて。とりあえず誰もいないところで、一人になりたかった。
 何も考えずに走ったらあの海に辿りつけるだろうか。きっと今なら、何でもできる気がする。何でも、できてしまう気もする。

「なあ!」

 大声を出した松野に呼び止められて足が止まった。そんな大声を出さなくても聞こえて──いや、多分、あの声量がなければ聞こえなかった。
 そもそも私は今、何を考えていた。場地にわがままを言って連れて行ってもらった海まで、この精神状態の中で一人で行って、その後は?

「何」
「……」
「マジで何?」

 呼び止めた割に一向に口を開かない松野に少し苛立って。そんな中で、少しずつ冷静になってきた頭で、すっかり言い忘れていたことを思い出した。

「松野」
「……何だよ」
「教えてくれてありがとね」

 これだけはきちんと顔を見て言わなければと思ったから、きちんと振り返って言葉にした。この霊園に来て初めてまともに見た松野の顔は悔しそうに歪んでいる。

「場地さん、」
「……うん」
「オマエにバレンタイン貰えるの、ちょっと楽しみにしてた」
「……『ちょっと』なんだ」
「嘘ついた。しばらく避けられてたオレでも察せるくらいにはスゲーめちゃくちゃ楽しみにしてた」
「……はは、かわい」
「場地さんにそんなこと言えんのオマエくらいだからな……」
「何で。あんなに可愛いのに」
「あのなあ……」

 そんなことを知ってしまったら、今更一人で海になんか行けなくなる。少なくともバレンタインは約束通りにとびきり美味しいものを作って、ここまで持ってこなければいけなくなったのだから。

「……一人で、帰ろうとすんなよ」
「送ってくれるの? ありがとう」
「当たり前だろ」

 悲しくて、やりきれなくて。感情はぐちゃぐちゃなのに、さっきよりも穏やかになってしまった。最低限の場地の代わりになろうとしてか、当たり前の様に隣に並んだ松野に、馬鹿だなあ、なんてことを思って──

「──奇遇だな、場地の墓参りか?」

 ──思っていたら、どこか懐かしさを覚える声が聞こえて足を止めた。
 声をかけてきたのは眼鏡をかけた金髪の男の子と、見上げる程に背の高い男の人だった。「テメェら何しに来た」と凄んだ松野は、当然の様に私を庇う位置に立つ。松野の知り合いだろうか。それもあまり良くない方向の。

「どけよ松野、オマエに用はねえ」
「なら帰れ」

 私の騎士になってくれるらしい松野は、小声で「走れるか」とも聞いてきた。そう聞かれてしまえばそりゃあ、走れるよと返すしかないわけなのだけれども。二人の視線は明らかに私に固定されているのに。

「場地の成績を上げた、何を考えているか分からない、天才の牧野サン……やはりオマエだったか」
「……は?」
「イメチェンでもしたのか? 黒髪も似合うじゃねえか、牧野」
「はァ……!?」

 ──なんとなく、分かってしまった。
 松野など居ないように振る舞う眼鏡の彼は、不真面目すぎた私を見かねた親に投げ込まれた塾で、最初の頃に一緒だった人で。なおかつ、周囲からは神童と言われていた子だ。ずっと数学系科目で勝てなくて、国語系科目では最初から一度も負けたことがなかった。
 あからさまに向けられる敵対心に辟易して、今よりもずっと怖いもの知らずだった頃の私は喧嘩を売ったのだ。丁度良いかなと思って数学系科目の分からないところを聞きまくって。どこが分からないかも分からなくて死ぬほど馬鹿にされ、心底腹が立ったから、自力で分かるところを模索して。それから見直されたのか、そこそこ仲良くなって。「オマエの頭を貸せ」とこっそり共有された壮大な悪巧みを鼻で笑い飛ばした頃には、私達ってそこまで仲良しだったか? とも思った。

「……稀咲も中学デビュー? お揃いだね。結果は真逆だけど」
「黙れ。人を見下すのは相変わらずか」
「その言葉、そっくりそのまま返すからね」

 最近は全然見かけないとも思っていた。けれど、そうか、不良になっていたのか。しかも松野のこの雰囲気であれば、例の壮大な悪巧みは実行段階に入っているらしい。相変わらず最悪だな。

「悪いけど、悪巧みの誘いなら他を当たりな」

 困惑しきりの松野に「走るよ」とだけ声をかけて、返事を聞く前にその手を引いて走り出した。あの二人が追ってくる様子はないけれど、逃げられるなら逃げた方が良い。稀咲はともかく、もう一人があのナリで弱い喧嘩をするはずもない。
 松野を半分引き摺りつつも、霊園の石畳の上を全力で駆け抜けていく。途中で「鍵貸して」と言えば「どういうことだよ!?」なんて反応をしつつも素直に投げ渡された。

「実はできるんだよね、運転」
「はァ!?!?!?」
「あれ、松野は何とも思わなかった? 重心合わせてたんだけど」
「……やたら運転しやすいと思ったのって、」

 場地の──今は松野のものであるらしいゴキに飛び乗り、「ご明察」と小さく笑った。ギシギシになるまで髪を染めるくらいに荒れていた頃に、当時の友達が派手に事故って死んでしまって以降、色々と思い出してしまうのが嫌でやっていなかっただけで。今はそんなことを言っている場合ではないだけで。

「事故ったらごめん、諦めて一緒に死んで」
「次それ言ったら殺すぞ」
「ははは! 不良こわ〜!!」

 そうして。多分もう、次は二度と乗れないだろうな、なんて。そんなことを考えつつ、かつて乗り回していたものと同じモデルのハンドルを握った。免許もヘルメットもない時点で無違反は無理でも、事故だけは起こさないように。

 ──次のバレンタインには、約束通り、とびきり美味しい友チョコをここまで持ってこられるように。