02
幸い、まだ校門は閉じられてなかった。
間に合ってよかった〜〜!!と正直かなり安心している。これであんだけ走って校門閉じてました!終了!骨折り損!となっていたらいよいよ目も当てられないくらいツイてない日になる。
さっさと教科書だけ回収して帰ろう。
そう思っていた数分前の自分を殴りたい。
厄日だ。こんな思いするなら校門が閉まっていてくれたほうがよかった。
「蟇ゅ@縺�h縺�…」
「ヒィ!!!!!」
なんだあれ、なんだあれ、なんだあれ!!!
普段見ないようにしてた奴らよりずっと大きくて気持ち悪いのが学校中をうろついてる。さっきからあっちこっち逃げてるのに新しいのがどこかしらにいて、しかもこっちを見つけると追いかけてくる。
目の前に職員室が見えたので急いで入ろう、とした
「隕九▽縺代◆」
あ、終わった。
そういえば今日ここで五条先生にもぶつかったじゃん。やっぱ扉開ける前には向こうに誰かいるか確認しないとなあ。来世の教訓にしよう。
「名前!!」
名前を呼ばれた。その瞬間、目の前の異形は何者かに吹っ飛ばされ宙を舞った。
悠二くんだ。あれっ、夢じゃないよね?
「えっあっ悠二くん!?なんで居るの!?帰ってなかったの!?」
「おばさんが名前が帰ってねーって言うから心配になって探しにきたの。てか名前こそなんでこんな時間に学校いるんだよ。部活認定されてないオカ研ですら早く帰らされたのに」
「ハハ……これには山より深く海より高い訳がありまして……」
「なんだそれ」
わざわさ学校まで探しにきてくれたのか。わたしの幼馴染マジ優しい。仏。
「とか言ってる場合じゃなかった!!悠二くん!!どうしよう!!」
「どうしようったって逃げるしかなくね?」
「そうだけど、ここから校門てだいぶあるよ……またあいつらに追いかけられたら……あれ、悠二くんそういえばアレが見えるの?」
「ん、なんか見えるっぽい。」
ちょっと前に探った時はそんな感じはしなかったのに。最近見えるようになったんだろうか。
「とにかくまずは職員室から出ないと……」
「まさかこの高さの窓から飛び降りるとか言わないよね?」
「……正直そうするしかないと思ってたんだけど」
「わたし悠二くんほど頑丈じゃないからぁ!!」
「名前!帰ってなかったの?悠二もいるじゃん」
聞き馴染みのある声。
「五条先生!?」
「先生!!」
我らが担任、五条先生が涼しい顔して立っていた。
「あんなのがいっぱいいてよくここまで来れましたね!?」
「ん?いやフツーに来た」
「その感じだと先生も見えてんだね」
「ああうん、知らなかった?」
知らなかったですよ!!!!
わたしが昼間見えないフリしようとがんばって努力してる間も先生は見えてて、しかも何食わぬ顔してたわけだ。
くう……思ったより近くに仲間は居たんだなあ。
「それより……よくここにわたしたちがいるってわかりましたね……」
「名前の声が聞こえたから。まだ帰ってなかったんだなーと思って。」
「先生はなんで残ってんの?」
「ああ、僕達はああいうのを退治してるんだ。特に今日は多いからねー、困っちゃうよ」
「僕達って……他にもいんの?」
「いるよー。だけど残念ながら今日はいない。詳しく説明してる時間もない。だから単刀直入に言うね。名前、君にはアレを倒す力があるかもしれない。」
「わ、わたし!?悠二くんじゃなくて!?」
「うん。まあいろいろあるんだけど、コレが使えるのは女の子だけ。」
ぽん、と何かがわたしの手に載せられる。
「ってコレ、ただのシャーペンじゃないですか!!誰でも使えるでしょ!!」
「いーや、見てよこのデザイン。流石に男が持つにはちょっとアレじゃない?」
確かにパステルカラーで見た目も可愛いデザインのシャーペンだ。大きめの石も嵌ってて絶妙に乙女心をくすぐる感じ。でも…
「そういう問題じゃないでしょ……」
「いいからいいから。それに少し力を籠めて振ってみて」
「ええ……なんで……いみわかんないです……」
「時間ないから、早く」
「はあ……」
力を籠める……?普通に力を入れるってことでいいのかな。とりあえず渡されたシャーペンをぎゅっと握って軽く振る。
するとシャーペンに埋まった石の部分から光が溢れ、みるみるうちにわたしを包み込んでいく。
気づくとシャーペンだったものはなんだかメルヘンな感じのステッキに代わり、わたしは……ステッキと同じようなメルヘンでフリフリなコスチュームに身を包んでいた。
「な、なんっ……」
「うん、カワイイカワイイ!」
「なんですかこれぇ!!!!」
恥ずかしい。普通にめっちゃ恥ずかしい。悠二くんは放心状態というかなんか口開きっぱだけど何も言わないし。せめて何か言ってくれ。余計に恥ずかしい。
なんだこのニチアサ感は……!そう考えると確かに一話っぽさがあるような気がすることばっかり起きている気がする……
「さ、変身も済んだことだしちゃちゃっとやっつけちゃってよ。」
「五条先生!?状況わかってます!?」
「大丈夫。今の君なら、あいつらを倒せる。」
「エッさっきまで逃げ回ってたんですよ!?」
「ほら、そのステッキをあいつらに向けて。さっきみたいに力を籠めてごらん」
「こう……ですか……?」
恐る恐るさっき襲ってきたやつにステッキを向けると、ステッキの先からきらきらとしたレーザーのようなものが放たれ、瞬く間に異形は塵と化した。
「あ、危なくないですかこれ!?」
「だいじょーぶだいじょーぶ。その調子でガンガン頼むよ!!」
***
普段見ないような大きい奴らをあらかた片付けたあたりで五条先生が「お疲れ!今日はこのへんにしよっか!」と声をかけてくれた。
あの力があれば変な奴らを退治できることはわかったけれど……あのキモいのに追われるのは普通にめちゃくちゃ怖かったし的を外して撃ってしまうこともあったし、何回かピンチだった。そのたびに悠二くんが持ち前の身体能力で助けてくれたけど、悠二くんがいなかったらわたしは一体どうなっていたか……ちょっと想像したくなかった。
「それにしてもまさか名前に適正があるとはね〜。」
「適正……やっぱりこれってそうぽこぽこなれるものじゃないってことですかね」
「そゆこと。名前には悪いけど、そうとわかった以上君には僕達に協力してもらわなきゃならない。」
「協力……」
「なに、難しい話じゃないよ。今日みたいにそれでパッと変身してちゃちゃっと変なのをやっつけるだけ。簡単でしょ?」
「そんな林檎のCMみたいに言われても……」
「それにリスクが伴うことだからね。お給料結構貰えるよ」
「あっお給料出るんですね」
「当たり前。タダ働きかと思った?」
世の中の女児のみんな。魔法少女は結構高給取りらしいよ。
「うーん……わかりましたよ。します、協力。気乗りはしないですけど他に人もいないみたいですし今日みたいなのにもし友達が巻き込まれたらって思うとこのまま放って置けないですし……」
「……あのさ、」
今まで黙っていた悠二くんが真剣な表情で口を開いた。
「俺、名前の力になりたい。幼馴染がこんなのと戦ってるの黙って見てるわけにいかねぇよ」
「ヒュゥ〜!青春だねえ」
「先生、俺も仲間に入れてよ!体力と腕っぷしには自信あるし、俺頑張るから…!」
「んー……わかった。いいよ。悠二ならそのままでも対抗できるかもしれない。まあなんにせよ今日はもう遅いし帰りな。詳しいことはまた明日以降じっくり話そ。送ってくよ」
五条先生に送ってもらい(正しくは五条先生が教育実習生の伊地知先生に私たちを送るように命令していたのだが)、わたしたちは家の近くで下ろしてもらった。こういうとき家が隣同士って便利だよなあ、とぼんやり思った。
車の中で伊地知先生もあの校舎に残っていたのかと聞いたがどうやらそうではないらしい。どこまで事情を知っているのかわからないのであまり会話はできなかった。
「ねえ悠二くん、ほんとによかったの?怖くない?」
「俺は名前が俺の知らないとこでボロボロになるかもしれないことのほうが怖いから」
「……そっか」
こうしてわたしの濃ゆすぎる一日は幕を閉じたのであった。
「……ねえ、もしかしてわたしが変身しなくても五条先生が倒してくれたらなんとかなったんじゃ……」
「俺も今思った」