日本人で良かった。ホグワーツに入学してからそう思う事は一度もなかった。
日本では色白と言われるこの肌も白人と比べれば黄色がかった肌色で、ハーフみたいと言われて少し自慢だった顔もここでは何てことなく幼い顔つきに見え、日本じゃ平均より少しだけ高かった身長も低く、何もかもが私から自信を奪っていった。
そしてアジア人が少ないホグワーツでは珍しいらしく、よくジロジロと顔を見られることが多い。
たまにジャップやイエローモンキーだとか差別用語をわざと聞こえるように言われることもあった。(純血主義のスリザリン生だから仕方ないと諦めている)
そんなことが入学してから重なれば、元々負けん気の強い私は努力に努力を重ね、座学も実技も誰にも負けないように勉強と練習をし、勉強の息抜きに運動して無駄な脂肪は落とし、美容と髪に気を使い、少しでも年相応に見えるようにメイクも練習した。
その甲斐あってか学年次席の座を入学してからずっと維持している。
「やあナマエ、朝ごはんはしっかり食べた?」
「ディゴリー。おはよう、ちゃんと食べたわ」
モソモソと好きでもないサラダを食べていると、クィディッチのシーカーで頭も良くて優しく、よく誰々が好き等の話しで耳にするセドリック・ディゴリーが空いていた右隣に座る。
何故か3年生になってから話しかけられることが増え、きっと正義感も強いのだろう。一人で行動することが多い私を気にかけてくれているようだった。
「サラダしか食べていないじゃないか。しっかり食べないと」
「朝から油っこいのはちょっとね……」
「はい、これならナマエでも食べやすいと思うよ」
私の言葉は聞かずに、ディゴリーは手際よく厚めにスライスされたバゲットにベーコンと目玉焼きを乗せて私に差し出してくる。
人の良さそうな笑顔で見られると、食べないとは言いにくく「ありがとう」と言って受け取ることにした。
あまり乗り気はしないが勿体無いし……と食べると、堅いバゲットがベーコンの油を吸って柔らかくなっていてベーコンの油っぽさもバゲットに吸われていて、思った以上に食べやすかった。
「どう? これ美味しくてナマエにも食べてもらいたかったんだ」
「すっごく食べやすい! まったく思いつかなかった」
ありがとう、と言うとディゴリーは無反応でお腹でも急に痛くなったのか? と思い「大丈夫?」と聞けば「あ、うん、大丈夫。そんなに喜んでもらえるって思わなかったから、ちょっとびっくりしただけだよ」と頬をかきながら笑う。モテないわけがない。ハッフルパフの王子という異名は伊達じゃないな、と心の中で頷いた。
「やだ、セドリック! こんな所にいたの? 探したのよ!」
「あ、やあエミリー」
「チンチクリンのミョウジに構ってないで私と一緒に食べましょうよ!」
急に現れたエミリー・ハウストンは驚いたと言わんばかりに私の方を見て目を見開き、ディゴリーの右腕を掴んで抱きしめる。
チンチクリンで悪かったなとハウストンから目の前に現れたトマトジュースに目線を移しトマトジュースを飲む。
ハウストンがディゴリーを好きなのはハッフルパフではもはや誰もが知る事実で、ディゴリーがたまに私の事を気にかける事が気に食わないらしい。全く持っていい迷惑である。
「人の事チンチクリンって言う前に一度、自分のサイズを確認してから言ったらどうかしら?」
「なんですって?! ミョウジって最低よ! 行きましょうセドリック!!」
「エ、エミリー! ナマエ、ごめんね」
これが漫画ならプンスカ! というエフェクト音が書かれているだろうなと思うほどにエミリーは鼻息荒く、セドリックを引っ張って行った。
「ナマエ、キミ最高!」
「それはどうも」
左隣りに座っていたカルロ・ターナーが楽しそうに笑いながら親指を立てる。
「エミリーって顔は可愛いけど自分の体型のことは棚に上げて常に人の悪口しか言わないんだ!」
「そうなんだ? 関わらないのが一番ね」
「俺ずっとナマエと話してみたかったんだ。でもキミって常に注目を浴びていただろう? だから中々勇気がでなくて」
「注目? ああ、ジャップとかイエローモンキーね。確かに悪口言われてる人と仲良くすると飛び火しないか不安になるから仕方ないよ」
「? 」