シンイチローを20回振ったオンナ

不忍の恋

「す、すきです!けっこんしてください!」
「……あらまあ」

 市古(いちご)佳代は頬に手をあて、小首を傾げた。
 両親と一緒に引越し挨拶に来ただけなのに、どうしてこうなったのだろう。これからご近所さんになる佐野家の長男は、黒水晶の目で佳代を見上げる。真っ赤に染まった頬はなんとも可愛らしい……が。

「初めましてでちょっとそれは難しいかなぁ」

 ぎょっとしたように孫に視線を落とす彼の祖父と、微笑ましそうに娘と年下の少年とのやりとりを眺める両親。
 つい最近月9の最終回で主人公が結婚式を挙げたシーンでは「佳代は嫁にやらないからな!」とべそべそ泣いていた父親だったが、所詮は子どもの戯言だと聞き流すことにしたらしい。
 小学生を相手にガチギレされても困るが。

「とりあえず、お名前教えてほしいな。私は市古佳代です」
「お、オレ佐野真一郎! ……佳代ってよんでいい?」
「いいよー」

 イカ墨のような瞳がキラキラ輝く。
 祖母の家から比較的近場にあったカフェのイカ墨パスタは美味しかったな、とふと思い出した。
 東京は東のほうが海に面していたと記憶している。せっかく越してきたのだから、いつか江戸前寿司を食べてみたいものだ。

「じゃあ私は真一郎くんって呼ぶね」
「名前よび……じっしつけっこん……?」
「うーん違うねぇ」

 難しい言葉なのによく知ってるなぁ。佳代は真一郎に合わせて腰を屈めたまま、にこやかに否定した。
 挨拶品のお菓子を片手に孫の首根っこを引っ掴む万作と、未だに頬を染めたままの真一郎に小さく礼をし、市古一家は次のご近所さんへと向かう。

 佳代10歳、真一郎7歳の出来事であった。


◆◆◆



 私の両親は共働きである。
 このたび父の出張と母の転勤が重なり、東京へと引っ越してきたのだった。
 前の家にいたときは両親の帰りが遅いこともしばしばあったため、近くに住んでいたおばあちゃんの家に預けられていた。そのせいだと言われたけれど、どうやら私とおばあちゃんの喋り方は似ているらしい。
 どの辺が似ているのかは、私にはさっぱりわからないけれど。

 前に住んでいたのはずいぶんと田舎のほうで、ちょっと家から出れば田んぼや畑が一面に広がっていた。クマの出没情報とかも出ていたし、近所のおじいちゃんは猟友会の人だったと記憶している。

 そんな田舎町からこうして都会に出てきたわけだが、やっぱりこういうのは段階を追わないといけないんじゃないかなぁ。家は塀に囲まれているところばかりだし、密集してるし、道は多いし。都会の人はどうして迷わないのか不思議でしょうがない。

 あとなんだか、緑が少ない気がする。鼠色や黒色ばかりだ。まあ、雨が降っているせいもあるのだろうけれど。
 この辺りに住む子達は一体何をして遊ぶのだろう。近くに山はないみたいだし、虫取りも木登りも川遊びもしないのかしら。

 きょろきょろと学校までの道のりを物珍しく思いながら歩いていると、後ろから誰かが駆けてくる音がした。
 ランドセルの中で教科書が上下する音を聞く限り、自分と同じ小学生だろう。この道を通るのなら同じ小学校だ。
 この子についていけば大丈夫ねと端に寄れば、何故か足音はすぐ傍でピタリと止まる。

「……あれ、真一郎くん?」
「え、あっ佳代! ぐうぜんだな!? いっしょに学校いこうぜ」
「ふふ、そうねぇ」

 振り向けば、先日衝撃的な初めましてを交わした真一郎くんがそこにいた。
 偶然と言うが、転校生として職員室に行くつもりで早めに登校している私と彼とでは時間が合わないので、わざわざ追いかけて来てくれたのだろう。
 若干息切れし、傘からはみ出してしまったのだろう肩やランドセルが濡れている真一郎くんに焦点を合わせる。

 一人っ子なので年下の子と関わる機会は少ないのだが、なんだか弟ができたみたいで心がほわほわする。無条件に甘やかしてしまいたくなってしまう。
 自分よりも低い彼を見下ろしながら横に並んだ。心なしかそわそわしているように見えるのが愛らしい。

 このくらいの年の子って、やっぱり年上に憧れるものなのかしらね。同級生にも、保育園の先生やいとこのお兄さんが初恋だっていう子がいたもの。

「な、なあ。この前のはなし、かんがえてくれた?」
「この前の話?」
「その、だから、オレとけっこんしてほしいって……」
「ああ……。ううん、まだ二度目ましてだからねぇ」
「っ、いつ? いつになったらかんがえてくれる?」
「うーん……難しい質問するのねぇ」

 都会の子ってマセてるのかしら。私達が小二のときなんて、休み時間に何して遊ぶかってことばかり考えていたのに。
 そもそも、この歳でお付き合いがどうのこうのということ自体考えたことがないのだ。漠然と高校生のお兄さんやお姉さんがしているイメージはあるけれど、それだけである。

 少なくとも、私達のような小学生にはちょっと早いのではないだろうか。

 眉を八の字にして答えあぐねる。
 期待に満ちた目で見られているところ申し訳ないが、私に恋愛事はまだ早い気がする。交際と友達付き合いの差もわからないのだから、無理はない。
 それに、恋愛的な意味で好きなわけではないのに申し出を受け入れるのは失礼ではなかろうか。

「それじゃあ、真一郎くんが大人になってもまだ私のことを好きでいてくれたら、もう一度告白してくれる?」
「……そうしたら、けっこんしてくれるんだな?」
「結婚するかどうかはちょっとわからないけど……。今はまだお友達」

 なんだか結婚願望の強い子だなぁ。
 わかった! と力強く頷いた真一郎くんに苦笑する。とりあえず納得してもらえたようでよかった。

◆◆◆




 月日が巡り、東京に越してから一年ほどが経った。
 今は学生の特権である夏休み真っただ中である。
 コンクリートのせいか東京の夏は暑く、外に出るだけでも疲労感が凄まじい。お盆休みを二週間後に控えた午後、朝のうちに読書感想文を終わらせて比較的余裕のあった私は、アイスを片手にお行儀悪く横になっていた。クーラーの効いた部屋の床は冷たくて気持ちいい。

 食べ終わったアイスの棒を電気に翳す。残念ながらハズレのようだ。
 ただの木の棒を持った右手をそのまま床に寝そべらせたくなるのを堪え、よっこいしょと起き上がった。ゴミ箱に捨てに行かなければ。

 立ち上がったタイミングでいいのか悪いのかインターホンが音色を奏で、「はあい」と聞こえるか微妙な返事をしながら玄関に向かった。そのついでに棒をゴミ箱に投げ捨てる。
 宅配便が来るとは聞いていないから、回覧板でも回って来たのだろうか。
 そう思ったが、玄関ドアの小窓に映る影を見る限りお客さんはずいぶん小さいみたいだ。

「あら、真一郎くん?」
「ッ、佳代。オレ大人になった! から、つきあってくれないか!?」

 どうしたの、という問いは真一郎くんの白昼堂々の告白に掻き消されてしまった。
 あらら? 結構前に納得してもらえたと思ったのだけれど……?
 首を傾げる私をよそに、真一郎くんは赤い頬を隠すことなくこちらを真摯に見つめる。その誠実さはとてもいいと思うのだけど……どうしてこうなったのかしら。

「えっとね、真一郎くん。確か私、前に『大人になってもまだ好きでいてくれたら』ってお話ししたと思うのだけど……」
「おぼえてるって! だから今日、もう一度こっ、告白しに……っ」
「うーん……?」

 駄目だ、要領を得られない。
 彼の大人の定義はピーマンが食べられるようになったとか、そういうものなのだろうか。だからこうしてなんでもない日に告白を……? いやいや、まさかそんな。

「一応聞くけど、大人になったって?」
「オレ、今日たんじょうびなんだ。ひとつ年上になったんだから、大人になっただろ?」
「うーん、なるほど」

 これは私の言葉が悪かったなぁ。というか、今日誕生日なのね。おめでとう。
 あれから告白されなくなったのでその間に気が変わればと思ったけれど、まさか一年間変わらず想われているとは。これが年上マジックというやつかしら。

「ごめんなさい、真一郎くん。言葉が足りなかったわ。私が言いたかったのは、」
「じゃ、じゃあ来年! 来年また告るから!」
「えっと、だからね、」
「オレ、なに言われたってあきらめねぇからな! 覚悟しとけよ」

 それだけだから! と走り去っていく彼の耳は相変わらず赤く染まっていた。
 ……どこでああいう台詞を覚えてくるのだろう。突然だったものだから、少しびっくりしてしまった。

 まさかその後、毎年の恒例行事のように告白されることになるなんて、このときの私は知らなかったのである。


◆◆◆



 高校に進学した私は電車通学ゆえか、真一郎くんと顔を合わせる機会がずいぶんと少なくなっていた。
 彼も彼で中学生となり、勉強に部活にと忙しいのだろう。もしくは、同級生に気になる子ができたのかもしれない。

 恋バナとか聞かせてくれないかなぁなんてそわっとしたが、年上の幼馴染でしかない私に話そうとは思わないだろう。最近話していないのだから、なおのこと。

 きっともう、年上マジックは消えたに違いないと私はわりと本気で思っていた。
 というのも、ここ二年ほどは毎年恒例の告白がされなくなったのである。少々物寂しさはあったものの、明確な理由もなく私に結婚を申し込んでいた彼がやっと冷静になったというのは喜ばしいことだった。
 どうか通算6回の告白を活かして、彼には好きな子と結ばれてほしいところである。人生の中でこんなにも同じ人に告白されるのは、後にも先にもないだろう。
 彼の告白は、私にとっても貴重な体験であった。

「……え」
「真一郎くんのお母様が亡くなったらしくて……。私達は仕事で行けないから、代わりに佳代がお焼香を上げに行ってくれない?」
「別に構わないけれど……」

 そんな話をされてしばらく、私はお母さんに持たされた不祝儀袋と数珠を手に佐野家を訪ねていた。
 真一郎くんのお友達だろうか、会場には制服を着た子がちらほらといる。
 親族席にはお祖父様、それにまだ小さな万次郎くんと手を繋いだ真一郎くんが着いていた。

 万次郎くんはこのお葬式の意味がよくわかっていないのだろう。不思議そうに自分の家族に次々と視線を移し、集まった参列者をきょろきょろと眺めている。
 ……真一郎くんは大丈夫かしら。
 参列者にお辞儀をする彼を遠目に、心配になった。


 慣れない葬儀は昨夜叩き込んだ作法でどうにか熟し、お葬式が終わる。
 無意識に気を張っていたのだろう。身体から力が抜け、そっと息を吐く。お友達に囲まれる真一郎くんを視界の端に、帰宅しようと私は席を立った。

「やだ! ねむいの!!」
「万次郎、もうちょっとで終わるから。な?」
「やだ〜〜っ!! シンイチローのばか〜〜〜!!」
「バカってオマエな……」
「家で寝かしといてやりゃあいいじゃねぇか」
「つってもオレらみんなやることあるし、万次郎だけ家に残しとくわけにもいかねぇんだよ」

 ポロポロと駄々を捏ねる万次郎くん。どうやら手をこまねいているみたい。
 確かにまだ幼稚園生の子どもを家にひとりで置いておくのは気が休まらないだろう。片付けがどのくらいかかるかもわからないし、その間に万次郎くんがひとりで外に出ない保障はないのだ。万次郎くんは真一郎くんに似て少々やんちゃらしいし。

「二人がよければ、私が真一郎くんの代わりに一緒にいようか?」
「えっ、あ、佳代!?」

 輪に近付いて名乗り出れば、何故か真一郎くんにドモられた。
 久しぶりって言ってからのほうがよかったかしら? そんなにびくびくされるとちょっとショックである。
 どういうわけか私の登場に反応を示したのは真一郎くんだけではなく、周りのお友達もニヤニヤしながら真一郎くんの腕に肘を当てたり背中を叩いたりしている。一体私の名前はどういう話とセットで伝えられているのだろう。笑えないデマと一緒に流布するのはやめてちょうだいね。

「ただうちだと万次郎くんが落ち着かないでしょうし、真一郎くんのおうちでお世話することになると思うけど」
「佳代がいいなら全然……! でも万次郎、癇癪起こすとめちゃくちゃ暴れるんだよ。……任せてもいいか?」
「大丈夫よ。万次郎くんもそれでいいかな?」
「……ん」

 両腕を突き出されたので抱き上げると、お気に召してもらえたのかグゥと眠ってしまった。
 知らない人に囲まれて慣れないことをやらされたから、疲れてしまったのだろう。子ども体温が温かい。

「ごめんなさいね、邪魔しちゃって。真一郎くんのお友達?」
「そうっす。佳代……さんはシンイチローの」
「幼馴染よ。まあ、最近は合う機会が少なくなってあまり話していないのだけどね」
「エ、会ってないんすか?」
「高校に入ってからお互い顔を合わせることも減っちゃったからねぇ。昔はよく一緒に遊んでいたのだけど」
「シンイチロー……オマエ、そういうとこだぞ」
「うっせ」

 うんうん、仲良きことは美しきことかな。邪魔者はここらで退散することとしよう。
 それじゃあと軽く頭を下げ(両手は万次郎くんで塞がっているため)、その場をあとにする。スペアキーの場所は変わっていないようなので、拝借して玄関戸を開けた。

 他人様のおうちは独特の匂いがするけれど、佐野家も例外ではない。真一郎くんが小学生のときに頻繁に遊びに連れて来られたこの家は、なんだか懐かしさすら感じられる。
 けれども人が出払って静けさに支配されたそこは伽藍洞で、空気がひんやりとしていた。

 居間に続く扉を引いて、しがみついている万次郎くんの腕をやんわり解きながら横に寝かせる。押入れから取ってきた薄手の毛布をお腹に掛け、特に意味もなく私も横になった。
 藺草の香りが鼻孔いっぱいに広がり、なんだかおばあちゃんの家を思い出させた。


「あ、おきた」
「……あれ? 万次郎くん?」

 どうやら彼の体温に負けて寝てしまったらしい。
 万次郎くんに掛けていたはずの毛布が私に掛かっている。彼が代わりに掛けてくれたのだろうか。

「寝ちゃってごめんね。万次郎くんはよく眠れた?」
「うん。でもはらへった」
「そっかあ。うーん、何か持ってたかなぁ」

 制服のポケットをガサゴソ漁る。
 運がいいことに、糖分補給用の金平糖が入っていた。腹の足しにはならないと思うけれど、ないよりはマシだろう。小袋に入ったそれを万次郎くんの手の平に出してあげる。物珍しいのか、万次郎くんは一粒摘んで光に透かした。

「んまい!」
「それはよかった」

 ころん、と舌先に転がして黒飴の瞳を輝かせる。ついでにブレザーのポケットに甘納豆が見つかったので差し出したら、こちらも美味しそうに食べてくれた。
 和菓子って好き嫌い分かれるのだけど、お気に召したようでよかった。あまり偏食しない子なのかもしれない。

 勧めるままに口に放り投げていく万次郎だったが、ふとこちらを向いて首を傾げた。真一郎くんと揃いの瞳に、不思議そうな顔をした私が映る。

「そういえば、だれオマエ」
「知らないで寛いでたの? 肝が据わってるのねぇ」
「シンイチローがオレのことまかせたんだから、わるいヤツじゃないだろ」

 きょとんとこちらを見上げる万次郎くん。
 お兄ちゃんのことを信頼しているのだろう。確かに真一郎くんは見知らぬ他人に大事な弟を預けるような人ではないけれど。もうちょっと危機感を教えたほうがいいんじゃないかしら。

「私は市古佳代。このお家の近くに住んでるの。万次郎くんがもっと小さいときに会ったことがあるんだけど、覚えてないわよねぇ」

 初めて会ったのは真一郎くんに「弟ができた!」と連れて来られたときだし、それ以降はまだ赤ちゃんの万次郎くんと手遊びしたぐらいだ。
 それも真一郎くんが小学生の頃だったし、覚えていなくても仕方がないだろう。

「カヨ? オマエがシンイチローがいってたカヨか?」
「ううん? どうかなぁ」
「シンイチロー、カヨのはなしばっかすんだぜ。駅にいたとか、スーパーでみかけたとか、オトコといっしょにいたとか、きょりがちかいとか。ブツブツうるさいんだ」
「それ、別のカヨさんじゃないかなぁ」

 私に彼氏はいないし、真一郎くんの意中の相手がちょっかい出されてるんだと思う。私の知っている真一郎くんは、見かけたらわざわざ声をかけに来てくれたし。それがないってことは本命の人には奥手だということなのだろう。
 ……なんだかそれは少し。

「ねーねー、このまめもっとないの?」
「……甘納豆のこと? あるわよ。あんまり食べるとお夕飯入らなくなるから、あと一袋ね」
「ちぇっ」

 孫がいたらこんな感じなのかしら。唇を尖らせる万次郎くんに甘やかしたくなるのをぐっと堪え、お菓子のゴミを纏める。私、結婚どころかお付き合いしている人もいないけれど。
 そういえば、さっき何を考えていたんだっけ。

 ぼんやりと天井の木目を眺めていると、玄関扉を引く音が大きく響いた。
 誰かが帰って来たらしい。出迎えようと居間から廊下へと続く扉を開ける。

「悪ぃ! 思ったより遅くなっちまった。アイツ大丈夫だったか?」
「おかえりなさい、万次郎くんいい子にしてたわよ。真一郎くんもお疲れ様」
「………………あー、うん。アリガト、ただいま」

 耳の辺りが少し赤いが、気のせいだろうか。
 目を逸らす真一郎くんを前に疑問に思っていると、トスンと左足に何かが衝突した。
 視線を落とせば、呆れたような顔をした万次郎くんが私を間に真一郎くんを覗き込んでいた。

「シンイチロー、そんなんだからダメなんだよ」
「は、はあ!? 万次郎に何がわかんだよ」
「だって、ぜんぜんつたわってねーよ? やーい、まんねんヘタレ!」
「おまっ、どこでその言葉、」
「明司がいってた!」
「アイツ……!!」

 トタタと走り去っていく万次郎くん。
 追いかけようと靴の踵を踏んだ真一郎くんは、何故だか勢いつけてこちらを向いた。

「あ、あのさ! また、あ……あ、あそびに、行ってもいいか?」
「ふふ、もちろん。私も前みたいに真一郎くんに会いたいし」
「えっ、それって、」
「シンイチローのこんじょーなし!!」
「万次郎、お前なあ!? クッソ、否定できねえ!!」

玄関に沈んだ真一郎くんだったが、すぐに復活して万次郎くんを追いかけ始めた。
兄弟二人の鬼ごっこは、万作さんが帰宅して拳骨を落とすまで続いたのだった。



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