場地圭介と愚鈍なお嬢様

未来より

 過去のわたくしへ。

 わたくしが恋をするとき、きっとお相手に想いを伝えることは叶わないと。あの頃好んでいたこの詩は、わたくしが恋をしたときの姿なのだと。
 そう考えておりました。ええ、その考えは当たっていましたわ。

 亡くなってしまった彼がいるはずがないのに。愚かな女は今でもあの人の姿を追い求めていますの。
 だからわたくし、花垣さまを信じて過去のわたくしに忠告致しますわ。

 どうか今度は、後悔のない生を。
 わたくしの二の舞にならぬよう、芽生えた恋心を摘まずに済むよう。

「……愛していますわ、圭介さん」

 わたくしの代わりに、どうか伝えてくださいな。


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君に似し姿を街に見る時の こころ躍りを あわれと思え
――あなたに似た背格好の方を見かけるだけで胸が躍るわたくしを、どうか可哀想だと思ってください。

石川啄木『一握の砂』より



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