#01碧落に飛ぶ少女 A
規則的なリズムで鳴り響く足音、木々に包まれた深緑の静かな世界。小鳥のさえずりと風に揺れる葉の音が木霊する壮大な森の中を、1人の少女が歩いていた。
真っ白なブラウスに紺色のスカート、澄んだ青空のように綺麗な色をした髪は2つの団子状に束ねている。少女の黒いロングブーツがコツコツと音を鳴らし、ある一点を目指して進んでいた。
ぐぎゅるるるる…
「………」
閑散としたこの空間に響く腹の虫。遠くで聞こえる列車の音でも誤魔化しきれないくらいの大きな音が鳴った。この空腹が満たされるまで、あと少しの辛抱だ。
深緑の先に白い光が見える。
動く足はその光へと一歩踏み入れた。
先程までの深緑が嘘だったかのように、真っ白な光が視界を支配する。白が薄れる頃には、瞳に映る景色は徐々に色を取り戻していった。
木の葉は緑に、雲は白に、空は青に。
そうして森を抜けて辿り着いたのは、“甘味処”と大きく書かれた木製の看板が目立つ、小さな店。
「すみませーん」
のれんをめくりながら中に入る。店内は赤い布が敷かれた木の椅子が4つほど並べられていて、線香の匂いに包まれている。端の方に腰掛けて、店の者が来るのを待った。
「はーい、いらっしゃい!」
店の奥から、白い髪を1つに束ねた明るいお婆さんがやって来た。少女は店の壁に貼られたメニューを見ながら、もう一度口を開く。
「みたらし団子2本ください」
「はいよ〜、ちょっと待ってくださいね」
もう一度中へ入った店主のお婆さんの背を見て、少女はふぅ、と息をつく。
3日間、休まずずっとあの森の中を歩いていたせいか、疲れが溜まっているようだった。
理由は1つ、迷子だったから。
慣れない土地に1人で行くべきではないな、と少女は学習した。
「はい、お待たせしました」
お婆さんが四角い皿にみたらし団子を2本乗せて運んで来た。
タレの良い香りに思わずヨダレが垂れそうになる。空腹は目の前のソレを求めていて、手は勝手に伸びていた。
1つ、2つと一気に無くなり、あっという間に2本とも完食してしまう。そんな少女の食欲に、店主は感嘆を上げた。
「いい食べっぷりだねぇ!そんなにお腹空いていたのかい?」
「そこの森を3日間彷徨ってたもんで…」
「もしかしてあの森を歩いて来たのかい!?あそこは無駄に広いからねぇ…列車は使わないのかい?」
「運動がてら歩いて行こうかなと」
「ええ!?あの森を!?馬鹿なことするねぇあんた…どこから来たんだい?」
「黄の国周辺から来たのです。この先のエメラルドストリートに用があったのですが、迷ってしまって…」
少女はそう言いながら、少し大きな紺色のポシェットから取り出した地図を広げた。
さっきまで彷徨っていた“緑の森”の南方面に、細長い通りが続いている。そこには“エメラルドストリート”と書かれていた。
「ああ、観光かい?だったらあそこの名物の抹茶ソフトクリームは絶対食べなよ?オススメだから」
「おおー!ソフトクリーム大好きなのです!絶対食べます!!」
観光目的で来たわけではないが、甘いものが大好きな少女はそれを食べる事を誓った。
ポシェットから財布を取り出し、店主にお金を渡す。ご馳走様でしたと言えば、店主も笑った。
「まいどあり!」
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