碧落ラストコネクション


「お…おお………!!」


団子屋から離れて暫くしてから、少女は目的地であるエメラルドストリートへ無事到着し、緑溢れる景色に思わず声を上げた。

通りの中心には木々が並び、その道を真っ直ぐ進めば、一際大きな大樹がそびえ立つ。ストリートに入る時に貰ったパンフレットによると、あの大樹は樹齢3000年の大老らしく、太い幹の中心には、世界の12の秘宝と言われている“エメラルド”が眠っているんだとか。


「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!エメラルドストリート名物、抹茶ソフトクリームはいかがですか〜!」

茶屋の前で看板を持ちながら宣伝するお兄さんの声を聞いて、少女は瞬時にそこへ行く。前には既に10組ほど並んでいて、後ろを見ればそれよりも長い行列が出来ていた。
大人気というのは本当らしい。早めに並んで正解だったようだ。


「いらっしゃいませ」


ようやく少女も注文できる位置に着いて、若いお姉さんは笑顔で対応する。抹茶ソフトクリームを頼もうとメニューを見れば、数量限定と書かれていた。

「抹茶ソフトクリームってまだありますか!?」

「はい、ありますよ!でも残り少ないんです。お客さん、ラッキーでしたね!」

そう言いながら抹茶ソフトクリームを渡される。お姉さんの言葉に少女は目を輝かせた。


「ありがとうございました!」



買えた….あの行列の中、買えた……!
店から少し離れて木にもたれかかる。先程までの賑やかさが嘘のように静かな空間だった。綺麗に巻かれた緑色のそれに感動しながら、溶けないように早めに食べてしまおうと大きく口を開く。
その時、

ビュンッ!!
「うわっ」

音が鳴るほどの強い熱風が吹いた。
持たれている木の幹まで震えるほどの威力で、息をするのもやっとだ。そんな油断していた少女の手から、悲惨にもソフトクリームが離れていく。


「あ゙ーーーーーーーーーーー!!!!」


落ちる、と思った頃には時既に遅し。
ベチョ、という音に下を見ると、可哀想な状態の抹茶ソフトがいた。


「あ…あんなに並んで……数量限定だったのにぃい!!!!」


抹茶ソフトの残酷な姿にショックを受けていると、熱風が吹いた方から人の気配を感じて、そちらに目を向けた。


──真っ赤な髪の、少年がひとり。

黒いパーカーに、黒いズボン、黒いブーツ。
黒尽くめの格好に、背中に背負われた炎の様に赤い大鎌が映えた、整った顔立ちの少年。

…綺麗。瞳まで透き通る赤色に少女が見惚れていると、少年と目が合った。少女とその地面にある悲惨な緑色に、少年は目を見開いてそちらへと近づく。


「…ねぇ、それもしかして俺のせい?」


透き通るような声でそう言った少年の指は、潰れた抹茶ソフトを指している。その言葉からして、さっきの熱風は彼の仕業なのだろう。
少女がコクンと頷けば、少年は苦笑した。


「ごめんね、見えてなくて…」

「え、あ…いいのです!気にしてないので!!」

「でも悪いよ。同じ物買うから、泣かないで」


目に涙が溜まっていたらしく、綺麗な長い指で拭ってくれた。どこの王子だよと内心突っ込んでしまう。そのまま少年に手を引かれ、先程のお店に向かう。しかし行列は無くなっていた。

宣伝のお兄さんが持つ看板は、“抹茶ソフトクリーム完売!”と書かれたものに変わっていた。

「抹茶ソフト…」

「わああごめん!本当ごめん!!」

再び泣きそうになる少女を、少年は必死にあやす。代わりに何をしようか、と少年は悩んだ。

「あ、そうだ…キミ、ここに来るのは初めて?」

「…?…はい」

「だったら…良い場所知っているんだ。おいで」


微笑んで背を向ける少年の後をついていった。


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