碧落ラストコネクション


どれだけ思考回路をなぞっても、121通り目の方法は見つからない。けれど、さっきから爆音も聞こえないし、レモンも来る気配がない。

一体、外で何があった…?

《マスター!近くに生命反応アリ!》

「……!」

レモンだろうか。でも足音は聞こえない。

「レモン…?」

《違いマス……反応方向は扉とは逆方向デス!》

「!?」

扉とは逆……つまり壁。
けれどここは最上階で、このフロアにはこの部屋以外存在しない。

壁の先は、外だ。

ドンッ!!!
音ほど大きくない爆発が、反応した方向で起きる。黒い空間に大きく穴が開きオレンジ色の煙が部屋全体を包み込んだ。

煙の隙間から空が見える。
何年かぶりの、外の空気を感じる。


…ああ、今日は満月なんだ。


手離さないようPCを抱える。この煙の色からして、やったのは恐らくソレイユ・オレンジだろう。年下とはいえ、相手はテロリスト。何をしてくるか分からない。
けれど煙から現れたのは、予想外の人物だった。

「どうも〜!あなたの太陽、シアン・ミルラーシュです!なんつって☆」

もくもくと煙が晴れて、沈黙する。
情報の少ない罪人の中でも、異名しか知られていないのは彼女くらいだ。

が、ハニーの情報収集能力は“紅の修羅”の情報すらも得ている。名を聞いただけで、実物を見ただけで誰かなんてすぐ分かった。それでも“世界最凶”を前にして、声が震える。

「な、何の用ですか…?ここには何もありませんが…」

「えっ、ありますよめちゃんこ!キミに会いに来ましたから!!」

「私に…?」

邪魔者を消そうと、殺しに来たのだろうか?もしくは、黄の国を潰しに…?
そう怯え身構えるハニーに、シアンは笑顔で言った。

「別に殺したりなんかしませんよ〜キミを助けに来たのですってば!!」

「た、助けに…?何のために……」

その言い回しからして、ハニーがここに監禁されていることも知っているのだろう。レモンが言っていた、自分を探っていた人物というのも、彼女なのかもしれない。

けれど、彼女が自分を助けて何のメリットがあるというのか。ただでさえ“世界最凶”の犯罪者として毎日のように暗殺されているであろうに。

「いやぁ〜実は今とある組織を立ち上げてまして!メンバー全員S級犯罪者なんですよ〜!」

「…!?」

メンバー全てが最高ランクの罪人の組織なんて存在するのか。S級にもなれば個々の能力だけで事を運べる筈だ。それでも集団になるというのなら、それほど困難な何かのために動くとしか考えられない。

「で、そのメンバーの1人に、キミをスカウトしに来たのです!」

「私を……」

「いえーす!なんせシアンはアホなので!賢いキミがいれば百人力なのです!!」


『お前がいればこの国は平和だ!』

『期待してるよ』

『我々黄の国にはお前が必要だ!!』


昔にも言われた事のある、同じ言葉のはずなのに。あの時の大人達同様、笑顔の裏に何を隠しているか分からないのに。
どうして、その言葉が暖かく感じるんだろう。

水色の髪は、空を思い出させる。
黄金の瞳は、太陽のように輝いている。

まるで、晴れた空を見ている気分だ。


「シアン達には、キミが必要なのです。他の誰でもない、キミが」

シアン“達”…ということは、既に他にもメンバーがいるということだろう。一体どれほどの手練れが揃っているのか。今までの爆発とオレンジ色の煙からして、ソレイユ・オレンジはそのメンバーの1人であると見て間違いない。

シアンはハニーにゆっくり近づき、手を差し伸べた。

「一緒に…鮮やかな世界、創ってみませんか?」

今まで会ってきた人の中で、私に手を差し伸べた人なんていなかった。レモンも、かつての仲間も、みんな。


『お前は天才だ。出来ないわけがない!』

『ハニーさんはいいよね。天才なんだから、努力する必要なんてないもの』

『羨ましい』

『羨ましい』


『羨ましい』



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