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そういうのにうってつけの場所といえば、校舎裏。そこに行くと案の定、さっきの女子たちと北篠がいた。
「ちょっと様子見よっか」
佐藤の言葉に頷いて、物陰に隠れる。女子の声がまあまあデカかったから、多少の距離でも聞き取れた。
「あんた、不登校生の癖に学園トップって何なの?」
「今まで繋海くんがキープしてたのに!」
「…カンニングでもしたんじゃないの?」
…ひとつ言いたい。お前らはいつから俺のファンになったんだ…?
あれか?もしかしてモサ男の時からか?
でもあいつらの視線は全く感じなかったぞ??
何だよ結局顔かよコノヤロウ!!まあ俺イケメンだから仕方ねえな!!
「サボってる癖に意味わかんない」
「繋海くんあんなに真面目に頑張ってるのにねー!」
じゃあ豊島はどうなるんだ。と佐藤が呟いた。まさにそれだ。
それにしても、言い返しそうな性格っぽい北篠がずっと黙ったままなのが気になった。
もしかして…意外と打たれ弱い…とか…!?
「ちょっと、何か言ったらどうなの?」
「やっぱカンニングしたんじゃない?」
北篠はテスト中、爆睡していたらしい。
テスト終了のチャイムが鳴ると1番後ろの席の奴が用紙を回収するのが決まりだが、窓際の列だけそれが少し遅れていたのは、アイツがチャイムの音にも気付かず寝ていたからだ。恐らくテスト中も寝ていたに違いない。
寝てるのにカンニング出来るわけがないはず……いや待て。
テスト中爆睡してた奴に俺は負けたのか!?
「女子ってこう…ネチネチしてるというか、姑息というか…怖いね」
佐藤が少々怯えていた。これは、俺たちが出た方が良いかもしれない。
その時、
「……岡部りの」
「は?」
「6月27日生まれB型、住所○○市××区×丁目△-××、電話番号××××-××××…親が携帯電話を持たせてくれないのでメールアドレスは無し。身長158cm体重…
「ちょっ、ちょっと何なの!?」
「あなたのプロフィールです」
北篠は突然、その場にいる女子の1人の個人情報を暴露した。な、なんで知ってるんだ?
「なっ…何なのあんた!何でそんなの知って……プ、プライバシーの侵害よ!?」
「個人情報を保護していると言ってほしいね。知りたくもないのに頭の中にインプットされてるんだよ。何なら他の方の個人情報も言いましょうか?」
「は!?」
「加藤みゆき9月8日生まれA型、ジョニーズの大ファン。最近同じクラスの田中裕介が気になっている。彼に告白す…
「いやぁぁぁああ!!やめてぇぇええええ!!!!」
聞いてはいけないことを聞いてしまった気がする。田中…お前、よかったな!!
あれ…俺のファンじゃなかったの?あれ??…何だろう、悲しくなってきたぞ??
「なっ…何コイツ…!?」
「何でそんなことまで…!?」
さっきまでの威勢はどうした、というほどに女子たちは北篠に怯えきっていた。後ろ姿しか見えないが、北篠は笑っているような気がした。
「ちょっと仕事の都合でこの学園生徒全員の個人情報管理してるんだよね。まだ言ってないだけで、他にもまだまだ沢山知ってるんだよ。…聞きたい?」
声を聞いているだけで、何故か見ている俺まで緊張してしまう。佐藤は完全に無言だった。
「いっ…いらないっ!!」
「もうヤダ…!」
「わっ、私やめる…!」
「はっ!?ちょっ…何それ…!」
北篠に完全にビビった女子たちは岡部さんや加藤さんを置いて逃げていった。
漫画やドラマでは、こういう場面はイケメンが助けるとお約束の展開の筈だが、そんなものは皆無だった。
逆にイケメンの俺がビビった。
「ふ、ふんっ!あんたがあたしの個人情報ちょっと知ってるだけでしょ…怖くなんかないんだから!」
岡部さんが捨て台詞を吐き、その場から立ち去った。その後を加藤さんが心配そうについていこうとする。その時、北篠が思い出したかのように加藤さんを呼び止めた。
「加藤さん」
「ひえっ!!な、何…!?」
加藤さんはもう北篠を恐怖の対象として見ていた。声も震えて裏返っている。北篠は加藤さんに耳打ちで話し始めたため、ここからは内容が聞こえなかった。
「……繋海」
「お?何だよ佐藤…」
「オレ…こ、怖くなってきた…も、もももう帰ろうぜ…?」
「は?様子見ようって言ったのお前…
「もう十分見ただろ!?これ以上聞くと加藤さんたちが可哀想すぎて俺まで泣きそうだから帰るぞ!!!」
「おわっ!?」
非常に情けない声を出した佐藤に腕を掴まれ、全力疾走させられた。
待て!!
俺結局見てるだけで終わり!?
-side 繋海 end.
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