同じ季節が巡る



春は花の花粉が苦手だという。
夏は焼けつくような暑さが苦手だという。
秋は夕暮れ時の物悲しさが苦手だという。
「冬は?」
答えはわかっている。
寒いから、苦手だと言うに決まっている。
わかっていながら聞くのもおかしいとは思ったが、訊かずにはいられなかった。
「冬は、指先がかじかむから、苦手」
ローの目の前にいるナマエは、まだ訪れてもいないその季節を思い出すように、指先をすり合わせて見せた。
「乾燥して手も荒れるし、足の指はしもやけができる」
「保湿して、よく温めろ。巡りが悪いだけだ」
「それで治りますか、先生」
「頑張って続けてみてください」
「ふふふ、いつの間にか診察になっちゃった」
そうしてナマエはやわらかく笑い、指先をローの手に伸ばした。形よく整えられた爪の乗った、白い指先が、皮膚に刻まれた墨をなぞる。
「春が来るまで、あたためてくれてもいいんだけど」
「悪いな、おれの手は休む暇もないほど忙しい。お前の手を包んでやれねェ」
「そっか、残念。それじゃあ、今年もわたしの手は冷たいままなんだね」
君の手は、あたたかいから。
名残惜しむような口調は、まるで駆け引きに使われるような誘い文句に似ていて、絡む指先はどこか扇情的にも見えた。
けれど、ローにはナマエのその仕草に、そんな深い意味はないことを知っている。
なぜなら、冬が近づくたびに毎年やっているのだから。

title by 宵闇の祷り

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