「穂村先輩が玉狛贔屓って本当ですか…」

 狙撃手の訓練後、太一が重苦しい雰囲気でそう聞いてきた。千佳ちゃんと出穂ちゃんと楽しく戯れていた私は「は?」と思わず眉を寄せた。何言ってんだこいつ。

「玉狛? 別に贔屓してないけど」
「でも! この前のおれらと玉狛の試合、玉狛のほう応援してたって!」
「この前の…? ああ、玉狛って三雲隊か。まあ三雲隊贔屓なのは認めるけど。別に玉狛贔屓ってわけじゃ…」
「同じことですよ!!」

 反論はしてみたが思いっきり否定されてしまったのでおとなしく黙った。ああなんかめんどくさいやつだこれ。溜息を吐き出すと隣で千佳ちゃんが苦笑したのが分かった。うんごめんねうるさい弟子で。

「大体最近の穂村先輩は雨取さんに構いっぱなしでおれのこと全然かまってくれない!! 寂しい!!」
「知らんがな」
「もっと可愛い弟子を愛でてください!!」
「なんだお前今日一段とウザいな…?」

 うんざりしながらとりあえず頭をぽんぽんと撫でてやると、太一は顔を真っ赤にして黙りこんだ。最近気づいたことだが太一は頭を撫でると大人しくなるらしい。

「ず、ずるい…」
「は?」
「おれの心を弄んで楽しいですか…」
「ごめん何言ってるかさっぱり分かんない」

 どういうこと、と千佳ちゃんと出穂ちゃんを振り返ると、二人とも苦笑して首を横に振っていた。え、これ分かんないの私だけか。また人にドライモンスターとか言われるやつじゃないですかやだー。太一は「穂村先輩に弄ばれたー!」と叫びながら訓練室から出ていった。おいこら待て。私の悪口叫びながら走っていくな。おいってば。

「なんなんすか、ドライモンスター先輩って激ニブなんすか」
「出穂ちゃんその呼び方やめてくんないかなー。いや鈍くはないと思うけど」
「その人は鈍いんじゃなくて人の心が分かんないだけだよ夏目」
「あ、ユズル!」

 これまた酷いことを言いながら現れたのはユズルだった。鈍いって言われるほど人の心が分かってないつもりはないんだけど、と言い返してはみたが無視されてしまった。えっ反応すらしてくれない悲しい。

「誰に好かれてても気付かないし嫌われてたって気にしない。そういう冷たい人間だよこのひとは」
「あまりにも酷いなユズルくんやい」

 流石に人に嫌われてたら気にするよ。私がユズルに嫌われててどんだけ落ち込んでると。多分それを言ってもまた無視されてしまうので黙っておく。

「でも橘先輩は優しいよ?」
「そうだぞユズル〜、師匠が取られて寂しいからってドライモンスター先輩にあたんのはやめな?」
「だからそういんじゃないって…」
「千佳ちゃんと出穂ちゃんがあまりにも優しくて私泣きそう」
「泣けないくせに」

 いや泣けないけど。ほら言葉の揶揄じゃん。ユズルほんとにお前私に冷たいな…なんでだよホントに。直接的にユズルに嫌われるようなことはしてないはずなんだけどな。

「あ、そういえばユズル千佳ちゃんに鉛弾教えたんだね」
「…雨取さんが言ったの?」
「え? あ、いや、わたしは言ってないけど……今日はついさっき会ったばっかりだし…」
「え、だって鳩原が考えてたじゃん。ライトニング鉛弾。千佳ちゃんに相性ピッタリだったねー」

 そう言ってユズルの頭を撫でようとすると、眉を寄せて跳ね除けられた。おっと悲しい。

「…あんたも知ってたのか」
「え、うんまあ。鳩原もよく考えたよねー。トリオン量足りなくて結局ボツだったけど。考えといて無駄にならないもんだ」

 そう言って跳ねられた手をそのまま千佳の頭に乗せた。大人しく撫でられてくれる千佳ちゃんが可愛い。すき。

「…やっぱりオレあんたのこと嫌いだ」
「えっ」

 すごい改めて言われてしまったショック。


 ▽


「でさー、ユズルってばひどくない?」
「あーまーしょーがないっすよユズルは。思春期のガキっすから」
「そっかあ思春期かあ。お姉さん悲しいわ」

 コタツで温まりつつそう呟くと、左側の面でぬくぬくと温まっている仁礼光ちゃんはうんうんと頷いた。いやあ仁礼ちゃんほんといい子。ユズルも見習ってほしい。

「…なんでテメエは普通にここにいるんだよ」
「てへぺろ」
「古いし可愛くねーよ。さっさと自分の隊室帰れ」
「えーひどいなあ。仁礼ちゃんとお話しに来ただけなのに」
「だけだから帰れっつってんだよクソ」

 ついでに影浦も見習うべきだ、と話しながら心の中でそう思う。ユズルも影浦も私に対して冷たすぎると思うんだよね。

「テメエがここにいるとチクチクチクチク刺さってきてかゆいんだよ。俺に興味あるのかねえのかどっちだ」
「えっいや私影浦をそんな目で見たことは」
「ちげーーーーーよ!!!」

 頭を叩かれた。いった。こいつ本気で叩いたな。一応私女だぞ。手加減しろ。

「とにかくかゆいから帰れ」
「横暴かよ…」
「まーまー穂村さん、カゲも思春期っすよー」
「あーね」
「いい加減殺すぞテメエら…」

 冗談冗談、と笑うと影浦はさらに眉を寄せてしまった。

「その笑い方」
「え」
「人との接し方。考え方。諸々直さねーとユズルはテメエに懐かねー」

 影浦に思わぬアドバイスをもらってしまって、私は黙りこんだ。え、っていうかこれアドバイスか? 悪口じゃなくて? ほぼ私の人格全否定されたような。

「仁礼ちゃん私笑い方変かな…」
「えー別に普通だと思いますけどねー?」

 うーん、分からん。

諸々直せと言われても

SANDGLASS