影浦隊との試合が終わり、私達凩隊は結果を待つのみとなった。試合の結果だけを申し上げますと、凩隊の勝利で終わりました。うん、結果だけ言うとね。ユズルを落とした後、私は普通にいつも通り狙撃手としてゾエさんを落として、影浦と闘っている凩さんのサポートへ向かった。そしたら凩さん死にかけだし影浦ピンピンしてるしで絶望を感じた。まじかよ影浦つっよ。何お前。びっくりたわ。不意打ちの効かない影浦になんとかちょこちょこと怪我を負わせつつ、地道に倒していった。なんか、ゲームで大ボス倒してる気分だった。もう二度とやりたくない。あの影浦のサイドエフェクト狙撃手の天敵すぎるだろなんなんだよもう。当たんない弾撃っても楽しくねーよ。…あ、なんか前当真も同じこと言ってた気がする……やだ……カットで……
「合格だって」
「え」
とまあ、それはさておき、どうやら合格、らしいです。
「いやいやいやいや、は?」
「はは……いや、合格だって」
「えっ、軽っ。そんな簡単に?」
「いや俺もなんか信じらんなくて…?」
あ、よく見たらなんか凩さんすっごい汗かいてる。うわあやばい。一番冷静じゃないこの人。
「まあギリギリだけど勝ったし大丈夫かなとは思ってたけど、現実になると怖いな」
「なんか全然実感湧きませんね。抓ってもいいですか」
「いててて!! なんで俺の頬を引っ張るの!? 自分のを引っ張れよ!!」
「嫌ですよ痛いですもん」
「さらっと!?」
いや、でも痛いのか。そうか。夢じゃないのか。
「………」
やっぱりなんか実感湧かないな。
▽
「えっ、マジで!? おめでとう!」
とりあえず一番に犬飼に報告した。いや、一番世話になったのはなんだかんだ隠岐だし、隠岐にも言うべきだなあとは思うんだけど。なんとなく、まあたまたまそこにいたのもあるけど、犬飼に報告した。
「ふっつーに喜ぶんだ」
「えっそりゃ喜ぶよ穂村じゃないし」
「おいこら。…いやそうじゃなくて、なんか私がA級上がるの反対なのかと思ってたから」
「えっ、なんで!? どの辺りが!?」
「私がA級に上がる話すると不服そうな顔してた」
「あーあれは……穂村ってほんとに人の気持ち汲み取るのへったくそだよね…」
「なんで」
「なんでもクソもないよ……はあ、まあ別にいいけど。慣れたし」
「だから何が」
結局犬飼は教えてくれなかった。また考察を間違えてしまったらしい。あーくそ、当たんないな。これは以前やった二宮さんの鳩原のことをどう思ってる考察も外れてる可能性高いな……あれは結構自信あるんだけど。うーん。
「…あ、ユズル」
「………」
「こらこら逃げるな逃げるな」
犬飼と別れたあと、ユズルに出会し、声を上げるとユズルもこちらに気付き、盛大に顔を歪めて反対方向に逃げられる。慌てて追いかけて捕獲する。そしてA級に上がれた旨を伝えてみる。
「あっそう。良かったね」
そしてこの反応である。くっそかわいくねえ。いやそりゃあんな倒され方した上嫌いな奴に素直な反応とりたくないわな。うん。私も同じことされたら同じ態度とる自信がある。
「もういい?」
「あ、いやユズルに聞きたいことあるんだけど」
「はあ……なに?」
「露骨に溜息吐かないでくんないかな。いや、鳩原のことで私のこと嫌いっつってたじゃん。あれの理由詳しく聞こうと……っておいこら逃げるなってば」
またも逃げ出そうとしたユズルの首根っこを掴む。なんで逃げるんだよ。
「ノーコメント」
「いや気になって夜しか眠れない」
「超健康」
まあそれは冗談として、気になるのは本当だ。私のあの考察が違うなら、なんで鳩原のことでユズルに嫌われているのだろうか。
ユズルは抵抗のつもりかしばらく黙っていたが、やがて観念したのか口を開いた。
「……鳩原先輩が」
「うん?」
「あんたのことを、すごいって褒めてたから」
「………は?」
予想外の台詞に、思わず首を傾げた。
「鳩原が人褒めるの珍しくなくない?」
「そうだけど。あんたのこと話すとき、すっごい目がキラキラしてて、あんな鳩原先輩、見たことないし。あんなに事細かに聞かされたのも、初めてだし」
「………」
「鳩原先輩に認められてるあんたが嫌い。あとあんた自身が嫌い」
だからそれ傷付くんだってば。
…とはいえ、思った以上に、理由が……なんか、
「可愛いやつだなお前は!!」
「っは!? 放せよバカ!!」
思い切りスネを蹴られた。
▽
「いってー…」
私はユズルに蹴られたスネを擦りながら呻く。うーん、やっぱり思春期の中二男子に抱き着くのはダメだったか……意外とシャイボーイユズルくん。しかし思ったよりずっと可愛い理由で不覚にもときめいてしまった。なんか反抗期の弟みたいに思えてきた。まあ当の本人は鳩原一筋なわけだけど。ユズル手懐けるとか鳩原凄いな、今更ながらに。
「(…にしても、鳩原がね)」
作戦ルームまでの道のりを歩きながら、首を傾げた。鳩原が目を輝かせて褒めてくれていたとは、全く想像できない。なんだ目の輝いてる鳩原って。見たいわボケ。
「(鳩原のほうが私より全然凄かったくせに)」
私は派手に人をふっ飛ばすから目立っていただけで、実際は鳩原のほうが射撃の腕は上だし、向上心だって信頼のされ方だって、鳩原のほうが上だった。私のほうが鳩原を褒めたいくらい、鳩原は凄かった。
まあしかし、悪い気はしない。鳩原に褒められるのは素直に嬉しいことだ。
「っし、待ってろよー」
鳩原にまた一歩、近づいた気がした。
一歩ずつ、確実に