「なあ夜久ー」
「あ?」
「夜久ってあのマネージャーと仲良いのか?」
部活の練習中、ふと黒尾にそんなことを聞かれて、俺はボールを打つのを止めて訝しげにそちらをみた。何だ、マネージャーって、崎岡のことか。俺はあのふざけた面を思い出し、眉間にシワを寄せた。
「別に。フツーだろ」
「ん? そうか? 大分仲良いだろ」
「そーか? ……そうか」
まあ、出会って数カ月にしては仲の良い方かもしれない。いや、しかしそれはあいつのふざけているというか初対面特有の緊張感がないというか、とにかくそういう態度によるものが大きいと思うわけで。あの入学式の日、話しかけたのは俺からだが正直なところ何で話しかけてしまったのか、未だに謎なところだ。キョロキョロしていて挙動不審だったにしても、普段なら放っておくところだったろうに。しかしまあ、別に今はそれなりにあいつと一緒にいるのは楽しい……のかもしれない。きっとこれを今あいつが聞いたらあの無表情だか笑ってるんだかよく分からない顔で「あは、やっくんてばテレ屋さんッ」とか抜かすのだろうがヤバイ想像だけで腹立ってきた。
「夜久顔怖えよ」
「…ああ、わり。……つーか、何で急に崎岡のこと?」
「あ? …いや、まあ同級だし三年間一緒の部活なら仲良くしとかねーとなあって。でもさあなんか何考えてんのか分かんなくて不気味じゃね? あのマネージャー」
「ああ………別にフツーの奴だけどな。案外絡みやすいし」
「フーン?」
まあ、崎岡の普段の言動というか態度についてはさておきとして、普通に見た目の割に絡みやすいし良いやつではある。俺以外にも女子の友達やそこそこ男にも話す奴はいるようだし、割と中心で笑っている姿をよく見かけたりする。見かけによらず絡みやすいのは間違いない。恐らくきっと、黒尾とも気が合うことだろう。そう言えば、黒尾は少し考えてから「それなら話しかけてみるかね」と少し首をひねった。
崎岡の方も黒尾のことが気になっていたようだし、ちょうどいいかもしれない。
「んじゃ、いっちょ仲良くなってくる」
「練習終わってからにしろバカ!」
「いって!」