「あ、おーいマネージャー、これ洗濯頼んでもいいか?」
その聞き覚えのある声に立ち止まり、そちらを見やる。するとそこには何だか個性的な頭の長身の男が立っており、私はそいつを見上げて固まった。いや、デカくてビビったとかそういうアレじゃなくて、声、が。
「ゆうきゃん…」
「は?」
「、ああいや、知り合いに似てたからさあ。これ洗濯ねー、分かったー」
ゆうきゃんの声に驚いて思わず名前を呟いてしまい、首を傾げるその子に適当に弁解して洗濯物を受け取る。割と真面目にマネージャー業をこなす毎日です。偉いね私!
受け取った洗濯物を選択するため踵を返して、先程の男の子について頭を巡らせる。夜久に頼まれてマネージャーを始めてから早いもので、一ヶ月が経とうとしていた。部員の顔も覚えてきたかなあと思っていたのだが、あんな子いたのか。しかもゆうきゃんの声を聞き逃すとは、私の耳もどうかしている。ほそやんなら間違いなく聞き逃さない自信があるんだけどなあ。夜久なら知ってるだろうか、あの子のこと。今日帰りに聞いてみよーっと。
ああそうだ、帰りと言えば。
「あー帰りたい」
いつになったら帰れるのやら。
▽
「ああそれ、多分黒尾だろ」
「ん? クロー? 外国人かな?」
「クロオな。ク、ロ、オ。クローじゃねぇよ」
「ああクロオ……黒尾くん? あー、もしかして友達が格好いいって言ってた子かな。あの子かあ。…ん? あれ格好いいの? どうなんだろう」
「俺が知るかよ」
帰り道、CVゆうきゃんの子について聞いてみると、やはり知っていたようで、名前が判明した。よく友達が格好いいと噂している黒尾くんだったらしい。そういえば友達に「黒尾くんと同じ部活なんだねー、羨ましいなー」とか言われた気がする。なるほどあれが黒尾くんね。そういえば入学式の日も会ったな。ゆうきゃんの声に感動したから覚えてる。忘れてたけど。
「何? 黒尾と話したの?」
「う……ん? 話したというか、いや話したってほど話してないけど」
「はあ?」
「いやあただ単に洗濯物頼まれて見覚えないなあって思っただけだからさあ。あと知り合いに似ててー」
声が、だけど。そう言って笑うと夜久も納得したようでふうんと引き下がった。
それから他愛のない話をして、私の家の前で別れる。どうやら私の家が夜久の家までの通り道らしい。いつも送られている形になっているのが何だか少しだけ照れくさい。私だって年頃の女子高生なわけで、そりゃあ同い年の男の子に送られれば照れくさくもある。まあ相手はやっくんなワケだけど。
「ちゃんと夕飯食えよー?」
「ハイハイー、夜久おかーさん」
「誰がおかーさんだっ!!」
やっくん夜夜。声大きいよ。慌てるやっくんに笑って、私は灯りのついていない我が家へと足を踏み入れた。