目が冷めたら、知らない場所

 目が覚めたら、知らない場所にいた。なんて、漫画のような展開が、たった今、私の身に起こっている。知らない部屋、知らない物、知らない服。窓の外を見ても、見覚えのない景色。私はワケが分からなくて、ただ首を傾げた。
 私がいたのは一軒家。とりあえず誘拐を疑ってみたが、部屋のドアは開いているし、誰かいないかと音を建てずに家の中を探しまわってみたが、誰もいなかった。ますますワケが分からなくて、私は更に首を傾げた。
 リビングに行くと、何か置き手紙のようなものが置いてあった。そのリビングにも見覚えはなくて、その置き手紙を勝手に読んでしまうことは戸惑われたけど、その手紙には私の名前が書いてあったのでどうやら私宛らしい。
 内容は、要約すればまぁこうだ。
 私は親に生活費だけ置いて捨てられて出て行かれた可哀想な子≠ニいう設定≠ナこの世界に飛ばされた、と。
 ますますワケが分からなくなった。この世界、って何だ。ここは私のいた世界じゃないってことなのか。そんな非現実的な事、信じられるわけがない。
 しかしリビングに飾られた、知らない女の人と幼い私が仲睦まじげに写っているのを見て、納得せざるを得なくなった。

「(…………最悪)」

 手に握った手紙を、クシャリ、握り潰した。


 まぁ、ウジウジしていても仕方がない。見れば生活費は結構置いていってくれたようだし、これを学費に当てるとしてもバイトをすればどうにかなりそうだ。手紙によれば私は高校一年生になる所で、音駒高校、という高校に通うことになっているらしい。制服は部屋のクローゼットにあった。
 この家には引っ越して来たばかりという設定(そんな家をよく出て行ったものだ)で、道を誰かに聞いても問題はないらしい。

「………馬鹿みたい」

 一人で何やってんだろ、と、自嘲気味に笑った。


 ▽


「えー、と、ここか」

 同じ制服を着た子達について歩くこと、五分。案外近い所にそれはあった。音駒高校の制服に身を包み、私はそこに立っていた。皆友達と居るようだったが、私には勿論知り合いも居らず、何となく右往左往していれば、ポン、と肩を叩かれた。

「え?」
「どうしたんだ? 体調でも悪いのか?」
「……あー、いや別に」

 声を掛けてきたのは、同じくらいの背丈の男の子。何というか、童顔、と言うのだろうか。幼い顔に、短髪、小さい背丈のその子は本当に年下にしか見えなくて、少しおかしくなった。

「……何か失礼な事考えてね?」
「まさか」
「…まぁ良いけど。クラス表あっちだってよ」
「あーうん」
「あ、名前は? 俺夜久衛輔な」
「わー格好良い名前だねー。私は崎岡葉月だよ」
「何か馬鹿にされてるように聞こえる」
「まさかぁ」

 拗ねたような顔をしたその子、夜久は更に子供のようだ。しかし言ったら怒られそうなので自重して、夜久と共にクラス表を見に行った。

 さて、帰れる日まで、それとなく過ごしていこうと思います。

SANDGLASS