まさか初の高校生活を、異世界で過ごすことになろうとは私も思いもしなかった。まぁまだ受験前で、行く高校が決まっていなかったのが救いだろうか。…いや良くはない。高校一年生で受験を経験したことがないというのは非常にまずい、と思う。まぁ大学は行く気ないのだけども。専門行こうかな、って漠然と将来を決めていたところだ。勿論前の世界で、だが。
さてさて、帰れる日までそれとなく過ごす、とは言ったものの、まず本当に帰れるのだろうか。一応私にも向こうに家族や友達はいるわけだし、帰りたい、とも思う。まだ実感湧かなくてよく分からないけど。
まず私のあちらの世界での存在はどうなっているのか。もし帰れたとして、そちらの時間軸は? 例えば帰れたとして、あちらの世界で行方不明≠ニかで騒がれてたとする。しかも時間軸は私がこちらで過ごした日数分で、突然私が現れたとしたら、それはもう大騒ぎだ。大変な事になる。神隠しとでもいうのだろうか。私そういうの全く信じない質なんだけど。実際自身の身に起きているのだからまた複雑だ。
一番良いのは、向こうの世界で私が消えた日の時間軸のまま帰れること。まぁ無駄に学校通うことになって大変面倒くさいのだけど。一番最悪なのは帰れないことだ。十二分にありえそうで怖い。
…と、そこまで考えて息を吐きだした。私がここまで頭使うのとかいつぶりだろう。らしくないなー。
「おーい、崎岡?」
「、やぁやっくんじゃないか。久し振り」
「いやさっき会ったばっかだろ。つか何だやっくんて」
「可愛くて夜久にピッタリだと思うよ」
「親指立てられても困る」
先程出会ったばかりのやっくん、基夜久衛輔。格好いい名前とは裏腹に童顔で低身長なとても可愛らしい少年である。私と身長同じとか可愛いよねー。因みに同じクラスでしたやったね。わーい。
先程出会ったばかりで馴れ馴れしいのは私のデフォルトである。何か一人で本読んでそうな根暗っぽい見た目のくせに話しやすいとよく言われる。褒められてるのか貶されてるのかよく分からないがここはポジティブに受け取っておこうと思う。
夜久は「入学式、行かないのか?」とどうやら考え込んで動かない私を誘いに来てくれたらしかった。おやまあやっくんとても良い子ですねお姉さん泣きそうです。嘘だけど。…え、同い年じゃんって? 嘘って言ったじゃん見逃してよ。
「行く行くー」
「…俺が声かけなかったらお前入学式サボってそうだな」
「よせやい、照れる」
「褒めてないけど!?」
「知ってる」
「……」
「お前疲れる」これもよく言われる台詞だ。どうやら私のノリが疲れるらしい。えー、どうせならノリが良いほうが楽しいじゃんね? 若干疲れ気味な夜久の背中をバシバシ叩いてやると、やっくん喜びの回し蹴り! ちょ痛いよやっくん。…え、喜んでない? そんなまさか。
「痛ぇよアホ!!」
「やっくん私のが痛いわ多分…」
「自業自得!!」
ぅおお……腰に来た……最近腰痛かったからな……更に悪化したかも。つら。老人のように腰を曲げて歩いていれば、先生らしき人が駆けてきて「崎岡さん!」………ん? 私?
「はい崎岡ですが」
「新入生代表挨拶、早く準備しないと、」
「…? 新入生代表挨拶?」
それって成績最優秀者がする奴? えー、何で私が。
「人違いじゃないですか。私はただの腰痛めた老人です」
「何で老人なんだよ」
「夜久が回し蹴りなんかするから」
「お前が人の背中叩くから」
「崎岡葉月さん……ですよね?」
「いや違います、山田花子です」
「えっ、」
「いやさっき崎岡で返事したし無理あるだろ」
この先生中々乗せやすくて面白いぞ。
結局私が挨拶をすることになってしまった。いやホント何故だ。私頭良いのか。いや普通だろ。見たとこ不良校ではないし、多分それなりの頭の学校だろうに。
何で私を首席にしたんだ。正直な所私の頭良くて中の中だよ? 平均中の平均だよ? こっからどうすんの? 中間とか期末とかふっつーの点数とって先生とかにお前頭いいんじゃないのかとか言われるんだよ? まぁマグレですとか言うけど。勉強? しませんけど何か?
「お前頭良いのか…」
「ねー、ホントびっくりだわ」
「何でお前が驚くんだよ」
「多分マグレだから?」
「マグレ!?」
「ねーやっくん代わってよー」
「いや普通に無理」
真面目に断られた。私結構マジで言ったんだけど……というかホントやりたくねー。性格上向いてないんだよホント、こういうの。
駄々をこねている間にも入学式は始まって、先生にうるさいと注意されながら体育館へと入った。