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幼稚園の頃から、冷めた子だ、なんて言われて過ごしてきた。それは私自身、自覚はあったし、正直言って周りからあれこれ言われるよりも、周りの五月蝿い子供に合わせることのほうが苦痛だった。
昔からお父さんもお母さんも喧嘩ばかりで、まだ幼稚園の子供に冷凍食品や出前で夕ご飯を済ませさせる冷めた家。そんな冷め切った家で、どうやったら周りの子のように脳天気に笑っていられようか。少なくとも、私には無理だった。それだけの事なのだ。
私はいつも、皆が外で遊ぶ中、建物の中で本を読んでいる可愛げのない子だった。先生が「遊ぼう」と声を掛けてきても、首を縦に振ったことはなかった。先生達が私の事を可哀想な子≠セと噂しているのは知っている。同情の手なら要らない。必要ない。私は今のままで十分だ。お父さんもお母さんも、仕事で疲れてるからイライラしているだけなのだと、自分で自分にそう言い聞かせていた。
いつものように、皆が外で遊ぶ中、一人で本を読んでいた。最初は声をかけてきていた同じクラスの子たちも、断り続ける私に諦めたのか、もう話しかけてくることはなかった。それで良かったのだと一人ただ本を読んでいた。いつもと変わらない日常であるはずだった。
……が、
「へぶっ!!」
「…………」
「………ぅ………いたい、」
………目の前で、男の子が転んだ。
どこに躓いたのか、私は冷めた目でその子を見た。少し緑っぽい黒髪に、そばかすの特徴的な顔。子供らしい可愛らしい顔付きのその子は、私の冷めた目が怖かったのか、転んだせいで打ったところが痛いのか、はたまた両方か、今にも泣きそうな顔をしている。
あぁ泣かれると面倒くさい。私は立ち上がり、棚においてあった救急箱を取った。「怪我したとこ、見せて」とその子に呼びかければ、その子はおずおずと、少し赤くなった足を見せてきた。
「名前なんていうの?」
「や、山口忠……」
「山口君、ね。私は、」
「あおばちゃん」
「……うん、そう」
どうやら知らない私の方がおかしかったらしい。同じクラスであるらしいその子、山口君は私の名前を呼んで、漸く笑顔を見せた。笑うと更に可愛らしい。
これが私と山口忠の出会いであった。
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