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「えっ、わ、別れちゃったんだ……彼氏さんと」
「うん」
「そっかあ………その人には青葉ちゃんの魅力が分からなかったのかな……その…もっと素敵な人いるから、げ、元気出して!」
「…うん、ありがと」
別に落ち込んではないんだけどなあ。
谷っちゃんの励ましを受けながら、私は内心で思う。別に相手が好きで付き合っていたわけではないし、振られたとは言ったが実質私が振ったようなものだと思う。別れよう、と切り出してきたのが向こうなだけだ。…しかし谷っちゃんにはきっと分からないだろう。嫌味とかではなく、純粋にそう思った。谷っちゃんはきっと私があの人の事を好きで付き合っていたと思ってる。そういう恋愛観、というか、なんというか、多分そういうのが違う。世間的にはきっと谷っちゃんの方が正しくて、そしてとても希少だ。…まあこういった事に正しい間違い云々はないのかもしれないが。
「まあ、しょうがないね」
へらりと苦笑いを作って、私は肩を竦めた。
▽
「…やまぐちー」
「…え? ど、どうしたの? 青葉」
「つらい。こころがいたい」
「ええ!? ほっ、ほんとにどうしたの!? 大丈夫!? 死にそう!? 死なないで!!」
「いや落ち着けよ」
その次の日のお休み、部活を終えて帰ってきた山口の部屋で、私は机に突っ伏して絡みに行っていた。そうしたら予想以上に大げさな反応が返って来て少し戸惑う。どうしたよ落ち着けよ山口。
「い、いやでも………ほんとにどうしたの? なんかあった?」
「……」
私は少し黙って、頭の中で言葉を整理する。なんと言おうか……
「ええと………谷っちゃ……友達の心が純粋過ぎて、その………自分の心の汚さに嫌気が差したというか」
これは山口にも常日頃感じていたことなので今に始まったことではないのだが、何というか、そこに谷っちゃんが加わったことでそれが爆発したというか。私が傷心中だと本気で心配している谷っちゃんは綺麗で、だから余計に私の心が汚れて見えて、それで、
「…青葉の心は汚くなんかないよ!」
「………、」
「俺はその、青葉は優しくて格好良くて素敵な人だと思ってるし、だから、その、自分をそんなに卑下しないで、ほしい、な」
「…………」
…………ああもう、こいつは本当に。
「よくそんな恥ずかしいこと言えるよね」
「っぅえ!?」
「………ありがと。元気でたよ」
へらりと笑うと、山口も少しきょとんとして、いつもみたいに少し間抜けな笑顔を見せた。
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