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「永原さん! 好きです、付き合って下さい!」
「…、」
告白された。別に初めてというわけではなく、私は少し考えて、それを受けた。相手はあまり話したことのないクラスメイトで、別段好きだというわけではないが、嫌いというわけでもなかったので付き合うことにした。嬉しそうに笑うその子をぼんやりとどこか上の空で見て、何とも言えない気持ちになった。
山口に報告すると、「そっか! 良かったね」と笑顔を向けられて、私もうん、と笑い返した。何が良かったのか、さっぱり分からないけど。
「今度は続くといいね」
「さあ……相手次第かな」
「いや、君次第デショ」
月島の呆れたような声と顔をちらりと見やって、相手次第だよ、と言い返す。だって告白してきて勝手に振ってくるのは、向こうなのだから。
告白されるのも誰かと付き合うのも、初めてというわけじゃなかった。中学の頃に何人かに告白されたことはあるし、その中の何人か、嫌いじゃない奴と付き合ったこともある。しかしすぐに、数カ月保たずに皆傷ついたような顔をして私を振っていく。「お前、俺のこと好きじゃないだろ」よく言われた言葉。嫌いじゃないよ、私は思ったままを口にする。そうしたら、皆離れていくのだ。傷ついた顔をして。いつも月島や友達には「アンタが悪い」と言われる。私は何が悪いのか、さっぱり分からなかった。
「好きでもないのに告白受けるの止めたほうが良いよ」
月島は言う。私は少し間をおいて、「月島には関係ないよ」と線を引いた。だって分からないよ。好きとか、好きじゃないとか。嫌いか、嫌いじゃないか。それでいいじゃないか。
▽
「………何その紅葉型」
月島が私の頬を見て、どん引きしたようにそう言った。これはまあ仕方ないと思う。私もこんな綺麗な紅葉型を頬に付けてる奴いたらどん引きする。山口は顔を真っ青にして、「だっ、大丈夫!? どうしたのこれ!?」と発狂している。落ち着けよ。
「……元彼にやられた」
「え!? …も、元?」
「…また別れたの? 最短記録じゃない?」
そう、元#゙だ。先日……二週間ほど前だろうか、に告白してきたその彼氏と、先程破局した。私の頬に見事な紅葉型を残して。別れ際に頬を叩くとか女か! とツッコミたかったが流石にちょっと泣いてたし可哀想なので口を噤んだ。偉いと思うよ私。
「な、何で? どうして?」
「………だって」
「うん?」
「山口たちともう話すなとか言うから」
「えっ、」
いつも、いつもこうだ。山口たちと仲がいい事に対して文句を言われて、次に私の態度について文句を言われて。彼氏がいたら、他の男と仲良くしてはいけないらしい。でも、だけど、話すなっていうのは言いすぎだろうって。山口は私の、って、言いかけて、そしたら、泣きそうな顔をして、殴られた。私の、なんて言おうとしたのか、私にも分からなかった。ただ、山口と話すなって言うのがどうしても嫌で、私は初めてあの人の前で感情的になった、気がする。
「そんなことで…」
「そんなことじゃないよ」
「でも、」
「でもじゃない。いいの、もう別れたから」
馬鹿だね、月島が呟いた気がした。
07
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