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「夏休みだからって羽目外すんじゃねーぞー。俺の盆休み潰したりしたら、お前ら末代まで呪っちゃうかもよー」

という無気力な声で恐ろしいことを言う担任の言葉によって、高校生活初の夏休みがスタートした。クラスメイト達は夏休みは何処に行くだの、何をして遊ぶだの早速浮かれ気分で騒ぎ出す。俺もしばらくは勉強しなくて良いという解放感によって、心が羽のように軽くなっていた。だが他の奴らみたいに騒ぎ出さないのは、特に夏休みの予定も決まっておらず、クーラーが効いて涼しい自室でゴロゴロして過ごす日が大半で、たまに友人達と遊ぶくらいだろうと予想がついているからだった。結局、1学期は彼女ができなかった。…彼女と海とかお祭りとかに行く、甘い夏休みを迎えたかったなぁ。



「悠人、お前成績どうだった?」

「数学がちょっとやべー…他は平均くらい」

「やっぱ数学苦手なのか。中学から変わんねぇな!」

一緒に帰り道を歩きながら爽やかに笑うこいつ、石橋明は千と同じく俺の幼馴染兼親友だ。ちょっと日焼けした健康的な肌と高い身長、さらにはイケメンと来たものだから明も女子にモテる。俺の幼馴染兼親友たちはなんでこんなに顔が良いんだ。うらやましい。

明は俺から目線を外し、俺の右隣を歩く千を見る。

「千、お前はどうだった…って聞くまでもないか」

「あはは。まあいつも通りかな」

千はものすごく勉強ができる。それは小学生の時から現在に至るまで変わらず、いつも学年で一番の頭脳を持っている。穏やかで優しくて美少年で勉強ができるとか、天は二物を与えるじゃないか。

「いつも通りだよ。体育も含めてね」

忘れてた。天は二物を与える代わりに、千から運動能力は奪っていったらしい。いや、与えなかったか。千は目も当てられないほどの運動音痴ではないが、どの競技をやらせても学年で下から数えた方が早いくらいの結果を出す。俺がこいつに唯一勝てるのは運動だけかもしれない。とは言っても、俺も別にスポーツ万能ってわけじゃないけど。でも人並みにはできるし、身体を動かすのは好きだ。


「ははっ!お前も相変わらずだなー」

「そういう明はどうなんだよ?成績、良かったのか?」

「ん?体育含めていつも通りだけど?」

「あぁ、そう…」

俺は呆れた目を明に向ける。明はスポーツ万能、高身長、爽やか、イケメンという千と同じく二物も三物も与えられた奴だけど、勉強だけは学年で下から数えた方が早い成績を出すのだ。天は明に頭脳は与えなかったらしい。俺が明に唯一勝てるのは勉強だけだ。そんなわけだから明と千の通知表を見ると、いつも数字の配置が真逆の状態となっている。ちょっと面白い。


「お前ら夏休み何か予定あんの?」

俺は左隣の明に目を合わせてから、右隣の千にも目を合わせる。

「俺は部活!練習しまくるぜ。夏休みの終わり頃に大会あるんだ!」

「僕は家族で旅行する予定があるくらいかなぁ。でもそれ以外は特に」

明は部活、千は家族旅行。これも毎年変わらない。

「悠人は何かすんのか?」

「いや、なんも。家でゴロゴロしてるわ」

図書部は夏休みの間は活動がないし、両親が共働きの俺の家は夏休みだからと言って特別な予定が入るわけじゃない。強いて言うなら、盆に祖父母が住む田舎に行って、面識のない先祖が眠ってる墓に手を合わせに行くくらいだ。でもこれは2日、3日程度のことだし、毎年恒例のどこの家庭にもある行事みたいなものだろうから、予定に数えられるものでもないだろう。


「そしたらさ、大会見に来ねぇ?」

千が爽やかに笑って問いかける。

「お前、試合出んの?」

「うーん、わからん!でも見に来てくれんなら、俺すごい頑張れる気がする!」

眩しいくらいの笑みを俺と千に向ける。俺は千と見つめ合ってから、

「じゃあ暇だし、行くかな」

と首を縦に振った。