貴方と共に

▼ゾロ&ロー:game続き(連載IF)リク


 二年の修業を終え、無事シャボンディ諸島に集結し、魚人島を経て、パンクハザードに向かった一行を待っていたのは、七武海となったトラファルガー・ローだった。
 そのローと海賊同盟を組み、現在ドレスローザに向かっていた。
 ヒノデは、パンクハザードのドタバタで、忘れかけていた二年前の約束を果たそうと、ローに近づいていく。

「トラファルガーさん」
「……何だ?」
「二年前の約束です! 髪紐返してください」
「紙紐、ね……」

 そう、二年前の修業の時、ヒノデから紙紐を奪い、その上で、自分が持っていた髪紐無理矢理渡したのである。
 ヒノデは懐から、藍色の髪紐を取り出すと、ローに差し出す。

「頂いた髪紐もお返しします」

 差し出された藍色の髪紐を一瞥すると、ローはなぜか甲板を見回し、ある男が居る事を確認すると、その口元に怪しげな笑みを浮かべる。
 その笑みにヒノデは嫌な予感が頭をよぎるが、ローがズボンのポケットから緑色の髪紐を出したことに、返してくれるのだと思い、手を伸ばしたが、なぜかヒノデが取れない位置まで髪紐を持っている腕を上げた。
 勿論身長差が数十センチ高いローが、腕を上げてしまっては、ヒノデが腕を伸ばしても届くはずがない。めい一杯腕を伸ばし、ジャンプして髪紐を取ろうとするが、ジャンプするたびに腕を左右に振られる為、取れないどころか、確実に遊ばれているだろう。

「あの、トラファルガーさん……?」

 いつまでも髪紐を返そうとしないローに、不安げに目尻を下げた時、不穏な空気を感じたのか、こちらに近づいてくるゾロを見て、笑みを深くすると、ローは上にあげていた腕を下げ、ヒノデの前に髪紐を差し出す。
 返してくれるのかと、ヒノデがパッと表情を明るくさせたが、次の言葉ですぐにその表情は崩れ去った。

「もう、おれのベッドに忘れていくなよ」

 その言葉が追いかけっこをしているルフィ、ウソップ、チョッパー以外のメンバーを凍らせるには、十分すぎる程だった。
 ヒノデもまさかそのような言葉が帰ってくとは思っていなかったのか、一瞬意味が分からず呆けてしまったが、流石に20歳にもなればローがどのような意図でそのようなことを言ったくらいは理解できる。
 先ほどまで明るくさせていた表情は、一気に羞恥で真っ赤に染めあがった。
 すぐに誤解を解こうと、口を開こうとしたヒノデだったが、後ろから伸びてきた腕がヒノデの首に手を回され、後ろに引っ張られる。トンっと背中がぶつかった先に居たのは、青筋を浮かべたゾロだった。
 腕はしっかりとヒノデの首に回されている。いわゆる抱きしめられていると言う状況だ。無論ゾロにそんな意識は無いとは思うが、ヒノデからしたら赤面物である。実際、顔は沸騰してしまうのではないかと言うくらい真っ赤になっているが……。
 その表情に、ローの眉間にも皺が寄る。二人の間に不穏な空気が流れ始める。
 そんな中、ヒノデは顔を真っ赤にさせながら、首に手が回されているゾロの手に両手を添えて、離そうと力を込めているが、離れることは無い、むしろ段々力が強くなっている気さえする。

「なんだロロノア屋? 今、白刃屋と話しているんだが」
「……今の話……本当か?」
「――本当だったら……どうするんだ?」

 ローの言葉に、ゾロは自分の腕の中に居るヒノデを見下ろす、ゾロに返事を求められているのだと思ったヒノデは、赤い顔をしながらゾロを見上げ、フルフルと首を横に振る。
 その姿を見て、ゾロはローに視線を向ける。

「違うって言ってんぞ」
「そうだな、まあ、冗談だからな」
「ハア!!?」
「でも、抱きしめたのは本当だ、なァ?」

 そう言いながら、ヒノデに顔を近づけさせたローに、ビクッとゾロの腕の中で震えるが、ある意味抱きしめたと言うのは、事実なので反論できない。
 反論しないヒノデを見て、ゾロの口元が引くつき始める。それと同時に、更にヒノデの首に回されているゾロの腕に力が込められていく。

「あ、あの、ゾロさん、腕、首しまってしまいます……」
「……」
「あの……ゾロさん……?」

 返事のないゾロに、上を向こうとした時、ゾロの腕が離され、ホッとしたのもつかの間、ゾロに強く腕を引かれ、無理矢理トレーニング施設まで連れてかれてしまう。
 その後ろ姿を黙って見ていたローに、ロビンが近づいていく。

「あまりからかっちゃだめよ。少しずつ距離を縮めていっているんだから」
「……」

 その言葉に、ローは掌にある緑色の髪紐を見つめる。これを持っている限り、きっとあの少女は自分の事を忘れることは無いし、必ず自分に寄ってくるだろう。
 唯一の繋がり。
 ローは掌にある緑色の髪紐を握り締めた。

「だったらその距離開かせてやるよ」



***



 無理矢理腕を引かれ、その後トレーニング室に上がるために、肩に担がれたヒノデは、トレーニング室に着くと、やっと肩から降ろされた。

「あの……ゾロさん……?」

 不安げに、自分を見上げながらか細い声で名前を呼ぶヒノデに、ゾロはハァ……と、溜息を吐く。
 その姿に、ヒノデの肩がビクッと震える。嫌われてしまった。その言葉が頭をよぎる。
 今にも泣きだしてしまいそうなヒノデを見て、流石に罪悪感が湧き上がったのか、ゾロは気まずそうにガリガリと頭を掻くと、俯いているヒノデの頭に手を置く。

「あ〜……悪い、八つ当たりだ」
「怒って、無いんですか……?」
「怒ってねェ、ただ……」

 そう言葉を濁すと、ゾロはチラッとヒノデを見やる。怒っていないと言う言葉に、安心したのか、先程より表情は和らいだが、やはりまだ表情は強張っており、ゾロの機嫌を伺うように、顔を覗き込んでいる。
 自分に嫌われてしまったかもしれないということを、そんなに気にしてくれているのだろうか、不謹慎ながらも、嬉しさが込み上げてしまう。
 ゾロは、そんな邪心を心の中で振り払うと、未だに不安げに自分を見上げるヒノデを見下ろす。

「とにかく、一つ約束しろ、トラ男と話すときは必ずおれを呼べ。分かったな」
「え、でも……」
「いいから、とにかくおれを呼べ、分かったな」

 いつまでも分かったと、言わないヒノデに、青筋を浮かべ始めたゾロに、ヒノデは恐怖を覚え、コクコクと首を縦に振った。
 ようやく了承の意を示したヒノデに、ゾロは満足気な表情をする。

「あ、でも……まだ、トラファルガーさんに髪紐返して貰ってないので、髪紐だけでも……」
「返して貰わなくてもいい、……あ、あれだ、おれが新しいの買ってやる。取り返すの邪魔したしな」

 突然のゾロの提案に、驚きやら、嬉しさやらで、ヒノデの頬が赤く染まり始める。それと同時にゾロの方も気恥ずかしいのか、意識を散らそうとしているのか、ガリガリと頭を掻く。

「とにかく、おれが新しいの買ってやる。――それともおれが買うやつは嫌か……?」

 もしかしたら、自分の買ったものを身に着けるのが嫌だから、ローにとられた紙紐を取り返そうとしているのかもしれない、ゾロの脳裏に嫌な想像が過るが、目の前で満面の笑みを浮かべたヒノデによって、すぐにその嫌な想像は打ち消された。

「いえ、その、すごく嬉しいです……。だからその、えっと……宝物にしたいなって……」

 頬を赤く染め、花が咲いたように満面の笑みを浮かべるヒノデに、ゾロはつられてほんのり赤く染まった顔を見られない様に、そっぽを向く。
 二人は気恥ずかしいくて、どうしようもないのに、それでもこの時間がずっと続けばいいのにと、思わすにはいられなかったのだった。


END


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