竈門炭治郎は頭を悩ませ、壱師紅は無表情ながらにも何とも言えない表情を見せた。
 彼等の目の前には今、不要となったシーツをすっぽりと被った小さなあらいぐまと小さなたぬきが立ちはだかっている。
 しかも、小さな両手を上げて威嚇するその姿は、とても愛らしく炭治郎の心をキュンキュンとときめかせた。

——おかしくれなきゃ、いたずらするぞっ!

 そんな匂いを漂わせながら「きゅう!」「あーう」と鳴く二匹に炭治郎は如何すれば良いのか分からず、また、季節外れの二匹の行動に対しての疑問符ばかりが浮かんでは炭治郎を困らせた。
 今日は四月一日である。異国の文化ではエイプリル・フールと云う、人を傷つけない嘘ならばついても許される日らしいのだ。だから、二匹が云う「お菓子くれなきゃ悪戯するぞ」が合言葉になる日ではないのである。
 それなのに二匹はしっかりとシーツを被り、お化けに扮している。そのことが炭治郎は一番の疑問だった。
 そわそわわくわくとお菓子を待つ二匹に炭治郎はどの様な判断をしようかと迷っていた時、今まで二匹を静かに見ていた紅が口を開いた。

「ハロウィンとエイプリル・フールを勘違いしてませんか?」

——エイプリル・フールはお菓子が貰える日じゃありませんよ。

 そう言った紅の言葉を聞いた二匹には衝撃的な事実だったのか、二匹の背後にガシャァァァァンッと稲妻が落ちた音がした気がした。