あらいぐまとたぬきの話

 お日様の光に照らされたふわふわな尻尾が一匹の子どものあらいぐまの目の前で揺れた。
 その光景にあらいぐまは、そわそわと己の整った尻尾を揺らし、何度も小さな紅葉の様な手を目の前で揺れるふわふわな尻尾へと伸ばそうとしては触れる寸前で引っ込めるを繰り返す。

「次は噛み付いちゃ駄目だぞ」

 毎回、言われる耳飾りをした人間の言葉。だが、まだ幼いあらいぐまは毎回同じことを繰り返す。だって、ふわふわな尻尾がゆらゆらと揺れるのだ。それに対して、むずむずとしたなんとも言えない気持ちが幼いあらいぐまの中で同じように揺れる。
 因みにふわふわの尻尾の持ち主は縁側に腰掛け、届かない足をぷらぷらとぶらつかせながら青い空を見上げている。時折り、歪な鼻歌の様なものも聞こえる為、ふわふわ尻尾の持ち主は御機嫌なのだと云うことが窺えた。
 そんな中、あらいぐまは静かに己の耳をぴこぴこと動かすと更にふわふわ尻尾へと近づいた。そして、小さな口をぱかりと限界まで開いたかと思うとそのふわふわの尻尾を小さな手で鷲掴みした挙句、かぷりと噛み付いた。

「きゅ!?!?きゅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!???」
「!?あ!!こら!!噛み付いちゃ駄目だって言っただろう!?」

 ふわふわな尻尾の持ち主は突然の尻尾への刺激に思わず鳴き声をあげた。
 そして、それを聞きつけた炭治郎により、あらいぐまは素早く首根っこを摘まれ、引き離されたのだった。