あらいぐまとたぬきの話2

 今日もふわふわ尻尾は噛みつかれた部分だけが、べっちょりとあらいぐまの涎で濡れている。そのことに、もう一人の飼い主の少女が溜息を吐いた。ふわふわ尻尾の持ち主の小さな身体を抱き上げると自身の膝の上に座らせ、唾液で濡れた箇所を水で濡らした手拭いで拭ってゆく。
 その隣では耳飾りをつけた飼い主の少年が今日も懲りずにふわふわ尻尾にかぷりと噛み付いた幼いあらいぐまを自身の膝の上に乗せながら、ふわふわ尻尾の持ち主と飼い主の少女の行動を見ている。時折り、あらいぐまの小さな足がぷらぷらと動き、可愛い三角の耳がぴこぴこと揺れる。その可愛い仕草に手入れを受けている尻尾が思わず、ふりふりと揺れそうになる。

「こら、まだですよ」

 飼い主の少女が揺れそうになっている尻尾に気がついたのか、嗜めるように尻尾の持ち主へと声をかける。ふわふわ尻尾の持ち主もその言葉にハッと我に返り、幼いながらにも自身は長男だから我慢するんだ!と言い聞かせる様にむんっと口を一文字に結んだ。
 だが、あのぴこぴこと揺れるお耳に触りたいと云う、むずむずとした気持ちが幼いふわふわ尻尾の持ち主の心をくすぐる。自分はいつも、自慢のふわふわ尻尾をあらいぐまに噛みつかれているのだ。少しぐらい、自分があのぴこぴこお耳に触れても怒られないんじゃないかと思ってしまうのだ。
 そんなこと考えちゃいけないのに、ふわふわ尻尾の持ち主は目の前で動く、可愛い三角のお耳から目が離せずにいた。

 するとそんな熱視線に気がついたのか、あらいぐまは少年の膝の上で大人しく座っていたのに突然、ぴょんっと飛び降りた。そして、ふわふわ尻尾を手入れされている最中で身動きが出来ない、ふわふわ尻尾の持ち主に近づくと静かに頭を下げ、差し出すような仕草を見せたのである。
 突然のあらいぐまの行動にふわふわ尻尾の持ち主は目を見開き、手入れの途中なのに思わず、尻尾はピーンと立ち上がる。二人の飼い主はお互いに顔を見合わせると同時に首を傾げた。

「……?」

 固まるふわふわ尻尾の持ち主と見守る二人の飼い主。そんな不思議な空気を感じとったのか、頭を下げていたあらいぐまはチラリとふわふわ尻尾の持ち主を見上げ「さわらないの?」と言いたげな表情を見せる。
 視界一面に触りたかったふわふわの三角の耳がぴこぴこと動いている光景が広がる。むずむずうずうず、触ってもいいかな?怒られないかな?と言いたげにふわふわ尻尾の持ち主は視線をきょろきょろとさせた。

——触りたい。でも、本当に触ってもいい?痛くない?大丈夫?

 不安げに揺れる瞳に等々痺れを切らしたあらいぐまが折角、手入れ途中だったふわふわ尻尾に再び噛み付いた。