あらいぐまとたぬきの話5

 壱師紅は人とズレた感性を持っているからなのか、偶に変な事件や騒動を起こすことが多い。しかも周りを巻き込むことが多く、その巻き込まれる人間は師範か紅に想いを寄せている炭治郎が多い。
 そんな紅に似てしまったのか、紅に似た子あらいぐまである、通称・ぐまべにも様々な騒動を引き起こすことが多い。
 これまた巻き込まれるのは、ぐまべにに想いを寄せる炭治郎に似たたぬき、通称・ぽんじろうが多いのである。
—そしてそれは、今も起こっていた。

 暖かな日差しの下、面倒を見てくれる紅とその師である不死川が任務の為に屋敷にいないからと蝶屋敷に連れて来られたぐまべには縁側をふわふわと飛ぶ綺麗な蝶々に目を奪われ、その後を追いかけ回していた。蝶は、そんなぐまべにから逃げるべく蝶屋敷に生えた桜の木の上へとふわふわと飛び、ぐまべにもそれを追うように小さな身体で大きな桜の木を登り始めた。
 そして気がついた時にはかなりの高さまで登ってしまっており、そのことに対して純粋な恐怖を感じたぐまべには小さな口をきゅっと結び、ぷるぷると震え始めた。
 たかくてこわいからおろしてほしい。そう思うなら鳴いて助けを求めれば良いのにぐまべにはぷるぷると震えるばかりで一向に鳴かない。
 そんな時、蝶を追いかけていた筈のぐまべにの姿が見えなくなり、心配で探しにきたぽんじろうが、木の上でぷるぷると震えるぐまべにを見つけてくれたのである。ぽんじろうは「きゅっ!?」っと焦りながらも震えているぐまべにをたすけなきゃ!!と云う優しさから直ぐ様、大きな桜の木に駆け寄るとうんしょ!うんしょ!と登り始めたのである。
 数分も経たずに震えるぐまべにの元に辿り着くとぐまべにを安心させるかの様にぺかーっと笑った。さぁ、おりよう!なんてぐまべにに手を差し出し、降りる為に下を見た時、ぽんじろうは固まった。
 ぐまべにを助ける為に何も考えずに必死に登った結果…ぽんじろうの予想よりも木が高く、ぽんじろうも恐怖を感じたのである。そして、震えるぐまべにと同様にぽんじろうもぷるぷると震え始めたのであった。
 ミイラ取りがミイラになる。正しくその言葉の通りとなってしまったのである。

「きゅ……」
「あーう……」

 小さな二匹がぷるぷると震えながら鳴き、そんな二匹を嘲笑うかの様に先程までぐまべにが追いかけていた蝶が二匹の周りをくるくる飛び回った。

 数分後、二匹の鳴き声を聴いた善逸と二匹の姿が見えないのを心配して探しに来てくれた炭治郎の二人により、木の上で二匹仲良く震えていたところを無事に二匹は保護されたのであった。