あらいぐまとたぬきの話7

 ぽんじろうとぐまべには、いつもお気に入りの襟巻きを巻いている。
 暑い日も寒い日もぽんじろうは炭治郎が使用していたものに近い物を、ぐまべにも紅が愛用している襟巻きに似た物を巻いているのである。
 これは元野生だった二匹が鬼殺隊の子であることが分かる様にと云う首輪の代わりとしてでもあり、また、何処に居ても目立つ様にと云う意味合いを込めて二匹にプレゼントした物である。
 二匹は其れを気に入り、首に巻いているが、何せ人間用である為に小さな二匹には丈が長く地面に引き摺る。其れを回避する為にと二匹の首の後ろで大きくリボン結びをされているのである。
 だが、まだ幼い二匹は野原を駆け回ったり、転がったりと激しく遊びまわることが多い。そしてそれによりリボン結びされた襟巻きが解けてしまうことが多々あるのだが、幼く小さな身体である二匹は自身の首の後ろまで手は辛うじて届くのだが、結ぶことが出来ない。ならば、お互いに結んであげれば良いのでは?と思うが、引っ張る力がまだ弱い二匹が結ぶとよれよれになり、また直ぐに解けてしまう。
 そんな時、いつも二匹は近くにいる人に駆け寄るのだ。
 そして今日も床を主にぐまべにがころころと転げ回ったが為に解けてしまった襟巻きを片手に偶々、蝶屋敷の廊下を歩いていた栗花落カナヲの元へとぽんじろうとぐまべにの二匹は駆け寄った。
 カナヲのスカートをぐまべには小さな紅葉の手でくいくいと引っ張った。突然の衝撃に驚きながらも己のスカートを握るぐまべにとその隣に立つぽんじろうに視線を向けたカナヲは二匹の手にある解けた襟巻きを見て納得した様な表情を見せた。むすんでくださいと言うように「きゅー」「あーう」と鳴きながら襟巻きをカナヲに差し出す二匹にカナヲはコクリと頷いた。
 直ぐにきゅっと大きくリボン結びをされた襟巻きは二匹の頸のところでゆらゆらと揺れた。  二匹はお互いの姿を確認し合うとカナヲに視線を向け、ありがとうと言う様に再び鳴いた。
 そして二匹が中庭に飛び出すのをカナヲは静かに微笑みながら見送った。

「また、すぐに解けそう」

 そして、また「むすんでー」と二匹は襟巻きを持ってくるのだろう。