炭治郎くんの恋は、うまくいかないシリーズ3
ぱんつネタ
※キメ学設定、炭治郎視点
今日は朝から外の気温が低かった。
朝三時に起き、店頭に並べる為のパンを作り終えた俺は朝食を済ませると家族に見送られながら学校へと向かった。
いつもなら同じ中高一貫のキメツ学園に通う禰豆子と共に家を出るのだが、今日は日直があるらしく、朝が苦手な禰豆子も頑張って早起きをして先に学校へと向かったので今日は俺一人での登校となっていた。
日が出たことにより、俺が起きた時よりも少しだけ気温が上がっているようだが、矢張り空気が冷たいことに変わりは無い。
肺が凍りそう、と迄はいかないが冷たい空気に俺の口から吐き出された吐息が白い靄となっては空気中に溶けて消えていった。
「今日も一段と寒いなぁ」
「そうですね。本当、冬将軍をとっ捕まえて吊し上げたくなりますよね」
「え、其れはちょっと可哀想…んっ?」
ぽつりと呟いた俺の呟きに対して会話するかの様に突然、聞こえて来た声に俺は不思議に思い、勢いよく顔を自身の真横へと向けると自身の視界に入って来た、先程迄は無かった筈の紅い瞳を持った人物の存在に俺は思わず「わぁぁぁぁぁっ⁉⁉」と驚き、叫んでしまった。
「べ、べべ、紅⁉⁉」
「はい、壱師紅です。おはよう御座います、炭治郎くん」
驚く俺を他所に突然、俺の真横から音も匂いも気配も無く現れた俺の想い人であり、同じキメツ学園に通うクラスメイトである紅い瞳の黒髪の少女・壱師紅は無表情のままのんびりと挨拶をしてきた。
俺は突然の紅の登場に対する驚きと朝から紅に会えた喜びで高鳴る心臓を押さえながら大きくゆっくり深呼吸をすると紅に「おはよう」と挨拶をした。
紅は俺の挨拶にコクリと頷くと「禰豆子さんはおやすみですか?」といつもなら俺と一緒に登校している筈の禰豆子がいない事に無表情ながらにも不思議そうな顔を見せ、俺は紅の問いに「あぁ、禰豆子は今日は日直なんだ」と答えると紅は「あ、そうなんですか」と納得した様に頷いた後、数秒、間を開けてからゆっくりと艶やかな唇を開いた。
「良ければ学校、一緒に行きませんか?」
紅の口から白い吐息が漏れ、空気に溶けて消える。
艶やかな口から紡がれた、紅からのお誘いに一瞬思考が追いつかなかったが、その言葉を理解した瞬間、俺は全力で首が取れそうな程、縦に振った。
だって、想いを寄せる紅からのお誘いだぞ⁉此れは、このチャンスを物にせず、いつすると云うんだ‼‼
俺は紅に気づかれないように小さく拳を握り、ガッツポーズをすると熱を持つ頬がだらしなく緩まないようにぎゅっと唇を噛み締める。
不思議そうな表情で俺の返事を待つ紅に俺はニッコリと笑いかけると「是非、お願いします‼‼」と思わず、頭を下げた。
その勢いの所為か俺の両耳に付けられた父の形見のピアスがカランと音を発てた。
紅は、そんな俺に「此方こそ宜しくお願いします?」と首を傾げながら返事をすると俺と共に学園へと向かうべく、道を歩き始めた。
紅は何方かと云えば口数が多い方ではない。
かと言ってキメツ学園の体育教師である冨岡先生ほど、口数が少ないわけでも言葉足らずな訳でもない。
きちんと話しかければ答えてくれるし、気を許した相手には自分から話しかけたり、悪戯を仕掛けることもある。
その悪戯は心臓に悪いことが多いが、其処は惚れた弱みとして仕方がないなと俺は思っている。
そんな事を思いながら、俺は紅と様々な話をした。昨日の晩御飯のこと、今日の宿題や授業のこと…お昼に何を食べるかなど他の人が聞いていれば、本当に特に此れと言って特別な話じゃないが
俺にとってはとても大切な時間となった。
そんな中、矢張り出るのは今日の気温の話だった。
「今日は本当に寒いな…」
「本当、寒いです。しかも、私達なんて素足ですよ。素足」
「良いなぁ、男子はズボンですもんねぇー」と不満げに俺の制服のズボンを見つめながら呟く紅に俺は苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
確かにこんな寒い日に幾ら制服と云えど、スカートは寒いだろうなと俺も思った。
しかも紅の格好は膝までの制服のスカートに学校指定の白いソックスとローファー、防寒具と云う防寒具は灰色の生地に紅色と白色の彼岸花が描かれたマフラーぐらいで如何にも冬を乗り越えるには厳しそうな格好だった。
「しかも、今日はパンツも履き忘れたのでスカートの下がスースーしますし最悪です」
突然の 紅の言葉に俺はピタリと動きを止めた。
はっ?え?ぱん、つ?へ?ぱ、んつが如何したって言った??
俺は戸惑い、歩いていた足をピタリと止めた。
数歩歩いたところで俺が足を止めたことに気がついた紅も歩いていた足を止め、背後を振り返り俺を自身の持つ紅い瞳で見つめる。
いつもの俺なら綺麗なその瞳に吸い込まれそうだなんてドキドキとしているのに俺の脳内は先程、さらりと紅の口から告げられた言葉が駆け巡り、俺の口は鯉が餌を求める様にパクパクと動かすことしか出来なかった。
俺の聞き間違いで無ければ、紅は、ぱぱぱぱん、ぱんつ…パンツを履き忘れたからスースーすると言ったように聞こえた。
パンツって何だっけ…?確かあれだよな?自分の下半身の大事な部分を隠す履物だったよな?
その、パンツを紅は何と言った?履いてない??
「え、紅…今日は、その…履いてない…のか?」
やっと喉の奥から出た掠れた声の問い掛けに紅は不思議そうに首を傾げるとコクリと頷いた。
「??えぇ。履いてないですよ。いつもなら制服に着替えるときに履くのに今日は履き忘れてしまったので本当に下半身が寒いです」
そう言って片手でスカートの上からお尻を押さえるような仕草を見せた紅に俺はカッと全身の血が沸騰した。
普段から高い体温は更に高くなったかの様に頬が、体が、全身が熱い。それと同時に紅は家では、もしかして裸族なのか⁉と言う疑問が頭を駆け巡る。
家では服を着ない人が居ると云う話は一度は耳にしたことがある。テレビに出ているような有名人が家の中で服を着ない生活をしているとその事をこの間、トーク番組で話していたのを確か禰豆子たちが見ていた気がする。
俺は洗濯物を畳んでいたから特にしっかりと見ていた訳ではないから内容はよく分からなかったが、竹雄が「裸族の人と結婚したら色々と大変そうだよなぁ。毎日、目のやり場に困りそう」と笑っていたのを覚えている。
そうだ、竹雄の言葉の通りだ。
俺は将来、紅をお嫁さんにしたいと思っている。竈門家の様な子沢山な温かな家庭を築きたい。今は何も踏み出せていない状態だけどいつかはそんな未来を築きたいのだ‼
そんな家庭を築けたとして…共に暮らし始めた紅が裸族だったら俺は色々と大変な思いをすることになるだろう。
目のやり場は困るし何より俺の心も体も持つか分からないのだ。長男だからある程度は色々と我慢できるかもしれないが、長男だって限度がある‼
ならば、此処で‼紅の裸族生活を矯正しないと‼っと云うか、先に今、履いていない状況をどうにかしないと‼‼
俺は心の中でそう決意すると目の前にいる紅の両肩を力強く掴んだ。
「流石に履いていないのは駄目だ‼今すぐ家に履きに帰ろう‼」
「えっ…」
俺の言葉に紅は無表情ながらにも驚いた様な表情を見せた。
いきなりなんなんだ?と言いたげだが、今の俺は紅を気にしている余裕は無い。
何時、そのスカートが風で捲れ上がり紅の本来ならば隠されていなければいけない場所が他の人の前に晒されてしまうか分からないんだ‼
とりあえず、紅にパンツを履いてもらわねば…‼‼
「取り敢えず、今日は寒いし女の子は体を冷やしちゃいけない」
「だから、帰ろう。帰ってきちんと履いて来よう。何なら俺も一緒に紅の家に行くぞ、な?」っと優しく声を掛けるが、俺の気持ちなど知らない紅は不思議そうに首を傾げたまま「戻るの面倒くさいですしこのままで今日は我慢します」と言った。
違うんだ‼‼我慢しないでください‼‼
俺は今すぐにこの今の状況をどうにかしたくて、思考をぐるぐると回転させるが当の本人は俺を変な人を見るような目で見つめ始める。
あぁ、もう‼どうすれば良いんだ‼‼
「分かった‼戻るのが嫌なら、コンビニに行こう‼‼最近のコンビニならパンツも売ってるし‼‼取り敢えず、履いてないのは駄目だ‼‼絶対に駄目だ‼‼‼」
紅の両肩を掴んだまま、俺は凄い勢いでズイッと紅に顔を近づける。すると、紅は驚いたかの様にきょとんとした表情を見せた。
大きく見開かれた紅い瞳の中に俺の姿が写っているのが見え、心臓がきゅっと締め付けられる。
顔が近く、吐息が触れ合いそうになった時、きょとんとした表情をしていた紅が何かに気づいたかの様にハッとした表情を見せた。
「もしかして、炭治郎くん。私の言った【パンツ】を下着の方の【パンツ】だと思ってます?」
「へっ?」
紅の言葉に俺は意味が分からず、思わず動きを止めた。
え?なに?パンツ?は?パンツと言えば下着だろう??其れ以外に何かあるか?………ぱんつ…ぱん、つ……ま、まさか………え、俺はもしかして…恥ずかしい勘違いをした、か?
「私の今日、【履いてくるの忘れたパンツ】は【毛糸の暖かパンツ】のことなんですけど」
「もしかして今までの会話の内容ですけど、ずっと私がノーパンだと思って会話してました?」と自身の犯した失態を理解した俺は、その失態に対してじわじわと込み上げてくる羞恥心に如何することも出来ず、声にならない叫びを上げながらこの場から去ってしまいたかった。
俺は……紅にパンツと言われ…完全にし、した、下着のことだと思っていた。
だから、履いてないのは駄目だと思ったんだ。
だけど…紅の言っていたパンツは…【暖か毛糸のパンツ】だったなんて‼‼
恥ずかしい‼そりゃそうだ‼幾らのんびりとズレた性格をした紅でも外に出るのにパンツを履かないなんてこと、するわけないのだ‼‼
あぁもう‼何で直ぐに冷静に考えれなかったんだ‼‼不甲斐ない、穴があったら埋まりたい…
と言うか、毛糸のパンツ履くのか…可愛いな…
俺は恥ずかしくて、紅の両肩から手を離すと片手で自身の顔を覆った。
「炭治郎くんのえっち、すけべさん。思春期少年め」
何処となく楽しそうな声色で俺を揶揄う紅
だが、俺は自身の失態に関する羞恥心で今にでも膝から崩れ落ちそうだった。
この後、俺は紅に背中を摩られ、励まされながら学園に登校したのだった。
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