※キメ学軸 炭紅が付き合ってます。

「炭治郎と紅ちゃんってさ、どっちから告白したの?」

 ——中高一貫・キメツ学園の昼休み…
 我妻善逸は机に頬杖をつきながら軽く尋ねてしまったことを酷く後悔した。

 善逸の友人である竈門炭治郎と壱師紅は恋仲、つまりカップルと呼べる関係である。
 四角四面なところもあるが、誰よりも優しい心を持った少年である炭治郎。それに対して紅は自由気ままでめんどくさがり屋な人と感性がズレている無表情な少女である。
 二人の出会いは入学式の日、炭治郎の一目惚れから全てが始まったのであった。最初は突然の知らない感情に戸惑い悩んだ様だが、紅が好きだと云うことを自覚した炭治郎は紅に己を意識してもらうべく、一等紅には優しく接したし誰よりも無表情な紅の変化に気づける様に努力した。だが、そんな炭治郎の頑張りを紅は、するりと交わしたかと思うと持ち前のズレた感性で炭治郎を翻弄し困らせていたのである。
 終いには、とある某テレビ番組の企画で屋上から頑張って紅に告白した炭治郎であったが、告白された本人である紅は幼馴染であり、数学教師である不死川実弥に誤ってパックジュースをぶち撒けてしまい、それにキレた不死川にぶん投げられたことにより保健室送りになっており、炭治郎の決死の想い届いていないのであった。
 この後も紅と炭治郎の間には色々とあったのだが、なんとか数週間前に炭治郎と紅は付き合うことになったのであった。

 そんな、二人の間に色々あったことを知っている善逸は目の前に座る幸せそうな表情を浮かべる炭治郎と炭治郎が作った己の好物である羊羹が入ったパンをもぐもぐと食する紅を見つめ、唯、どちらが告白したのかと気になったので口に出してしまったのである。
 その善逸の言葉を聞いた炭治郎と紅は、きょとんとした表情を見せた。赫灼の瞳と紅い瞳が善逸へと向けられ、その後、お互いの顔を見つめる。 ——赫灼の視線と紅い視線が重なり合い、その瞳が緩く歪んだかと思うと二人がゆっくりと口を開いた。

「俺からだ」
「私からです」
「……えっ?」

暫しの沈黙が三人の間を駆け抜け、伊之助も何があったのか分からず、首を傾げている。

「もう一回、聞くね…?どっちから?」
「私です」
「俺からだ」
「………」
「…………」
「………………」
「「「え……⁉︎」」」

三人は訳がわからず、同じように声を上げた。
 いやいやいや、待って。何で炭治郎も紅ちゃんも驚いた表情してんの⁉︎アンタらのことでしょ⁉︎⁉︎と善逸は声を荒げそうになるのをグッと堪えた。いつもの善逸なら耐えること無く、言っていた筈だ。だが、目の前に座る本人達が驚いた様に目をまんまるとさせているのである。しかも、二人とも驚きの声の後に口に出した言葉が「ど、どれが告白だったんだ⁉︎」「どれが告白だったんですか⁉︎」である。

 竈門炭治郎は四角四面なところがある。
 壱師紅は人と感性がズレている。

 故に二人は何方から告白したのか。いや、それよりもどの言葉が告白だったのか。と云うか、え?自分達は、いつから付き合っていると認識しているんだ?と云う疑問が生まれてしまったのであった。

「俺は紅に言っただろう⁉︎『君の好きなものを使ったパンを作りたい』って‼︎」
「炭治郎、それが告白だと理解するのは難しいよ⁉︎」
「私だって言いました。『炭治郎くんの家の植木鉢に水遣りしたいです』って」
「其れは炭治郎の告白より理解し難いよ‼︎‼︎」

 炭治郎の告白も理解し辛いが、それを上回る程、紅の告白も理解し辛いものであった。
 お互いに好きだと云えば速いのに炭治郎は其れを実行した際に紅がその場に居らず、心が折れそうになり、紅へのアタックが変な方向へと向いてしまい、紅は元から人との感性がズレているのでこうなってしまったのであろう。

 合っている様で噛み合わない炭治郎と紅の二人に対し、我妻善逸は軽く尋ねてしまったことを本当に後悔したのだった。