※現パロ設定 同棲してる炭紅

「虫歯がありますねぇ。当分は甘い物を控えて、しっかりと歯磨きしましょうねー」

 ズキズキと痛む歯を見た歯科医に告げられた言葉に紅は頭を鈍器で殴られた様な感覚を覚えた。

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 それは数日前から予兆があった。

 キメツ学園を卒業後、大学へと通い始めた紅は一人暮らしを始めたのである。
 場所は恋人である竈門炭治郎の実家・竈門ベーガリーの近くを紅は選び、炭治郎に合鍵を渡していた。
 合鍵を渡されていた炭治郎は毎日と言って良いほど紅の家を出入りしては面倒くさがり屋で食事を疎かにしようとする紅の食を管理していたし紅も炭治郎の手料理が大好きで自身がバイトから帰宅して、炭治郎が自身の家の台所に立っているのを目にしては無表情ながらにも目をきらきらと輝かせていた。
 炭治郎のご飯が紅の一番の楽しみであり、炭治郎もそのことを知っている為、紅に沢山の料理を振る舞っていたのである。
 その予兆を感じた日も紅は炭治郎の料理をもぐもぐと食していた。
 甘辛く煮込まれた肉じゃがに浅利の味噌汁と紅の好物である茄子の煮浸しと云う、愛しい恋人の健康を考えた炭治郎の手料理に紅は無表情ながらにも心を踊らせ、炭治郎に対して「いつでも私の婿養子になれますね」「なんで婿養子⁉︎⁉︎いや、結婚は嫌じゃなくてむしろ嬉しいんだが…」なんて冗談か本気か分からないこと言っていた時だった。
 ほくほくのじゃがいもを紅色の箸で摘み、自身の口に放り込み、もぐっと噛み砕いたその時、ガリッと云う音が口内から聞こえたと同時にズキンっと右の奥歯に痛みが走った。
 一瞬の出来事に紅はピタリと動きを止め、痛みを感じた右頬を箸を持ったままの右手で押さえ、直ぐに舌で口の中を確認するが、何かが歯に挟まっている感じも欠けた感じも無かった。
 口に入れたじゃがいもは柔らかく直ぐにほろほろと口の中で崩れた為、じゃがいもが固かったと言うわけでは無さそうだった。
 紅は訳が分からず、小さく首を傾げていると紅の様子に気がついた炭治郎が「歯が痛むのか?」と尋ねてきた為、紅は思わず首をぶんぶんと横に振り「何もないです」と答え、その日は過ぎたのであった。

 そしてまた次の日の食後のデザートに羊羹を食していた時、またしても右奥の歯がズキンと痛んだ。
 昨日とは違う強めの痛みに紅は、またしても動きを止めた。隣にいる炭治郎にバレない様にすぐに体勢を立て直し、何も無かった振りをしようとしたのだが、それを炭治郎は見逃しはしなかったのである。
 紅の肩をガシッと掴み、自身の方へと振り向かせるとにっこりと有無を言わさない様な笑みを浮かべ、紅に「やっぱり、歯が痛いんだろう?」と言ったが、紅は力強く、必死に顔をぶんぶんと横に振った。
 紅のその必死な表情に炭治郎は眉間に皺を寄せたかと思うと紅の両頬を自身の両手で挟み、無理矢理口を開けさせようとしたが、紅は其れを阻止するように必死に歯を食いしばった。
 だが結局、炭治郎の力には敵わず、口を開けさせられた紅はジト目で炭治郎を見つめ、紅の口の中を覗き込んだ炭治郎は「ほら‼︎やっぱり虫歯があるじゃないか‼︎」と声を荒げた。
 こうして炭治郎に虫歯がある事がバレてしまった紅は大人しく炭治郎に手を引かれて歯科を訪れ、冒頭の言葉を歯科医より言われたのであった。

「痛かったら手を上げてくださいねー」と言われ、治療中、何度も痛みで手を挙げた。だが、歯科医は無情にも「はい。痛いねー、もう少し頑張ろうねー」と挙げた手を下ろす様に促してきた。何度も嘘つきじゃないですか‼︎と紅は叫びたかったのをぐっと堪え、治療を終えた紅は待合室にいた炭治郎の肩にごつごつと頭突きをしたのは悪くないと思った。
 
———そして、その日の夜…

「ほら、虫歯になるのは嫌だろう?きちんと歯磨きしような」

夕食も風呂も明日の用意も終えた紅がリビングで寛いでいると炭治郎に名を呼ばれ、洗面台へと運ばれた。
 鏡の前に立たされたかと思うと炭治郎に「はい」と歯ブラシを持たされ、その持たされた歯ブラシにぶちゅっと歯磨き粉をつけられる。
 突然のことに思考がついて行けず、頭に疑問符を沢山浮かべていると炭治郎は、またしても笑顔で言ったのだった。

「紅の虫歯の治療が完了するまで毎日、歯磨きの監視をすることにしたからな」
「…………えっ?」
「因みに虫歯の治療が完了するまで甘い物はお預けだぞ」

紅の大好きな羊羹も治るまでは食べちゃダメだぞ!と言い放った炭治郎に紅は目の前が真っ暗になったのであった。