バレンタインストーリー(風間仁)

―valentine story ―

【仁編】

「何をしているんだ?」
仕事から帰って来ると、部屋に充満する甘ったるい匂い。
「お帰りなさい仁」
キッチンからひょいと顔をだすナーナの頬には、この甘い匂いの原因が。
「バレンタインか」
カレンダーの14日の所に点けられた印しを見て、この甘ったるい匂いに納得する。
仁は着ていたコートをソファーに投げ捨てると、キッチンへ向かった。

「それにしても凄い量だな?」
用意されていたチョコレートの量に、仁は驚く。
「そんなに配る所があるのか?」
「えへへ……」
仁の言葉に苦笑いするナーナ。
「……成る程な」
仁はその笑いの意味を理解したのか、はあーっとため息をつく。それからナーナの頬についているチョコレートを、ペロッと舐めた。
「もう!!」
「旨そうだったから、ついな」
口角を上げ意地悪く笑う仁。
「で、どこを失敗してるんだ」
「あのね、何回やっても気泡が入っちゃうんだよ。焦げるし」
ナーナの言葉に苦笑いする仁。
作り方を見ていれば失敗のしようがないチョコレートの湯煎とオーブンの温度調節。
「まず温度が高すぎるな。湯煎はボールに温かいお湯を張って……」
仁は丁寧にナーナに説明し、一緒に作り始めた。

よく説明書を読まないけど、目分量で適当にやってしまうけど、一生懸命な、不器用な彼女が可愛いくてつい口許が緩んでしまう。

「出来た!!ありがとう仁♪」
「やれやれ」
ラッピングも完成し一息つくナーナ。結局ラッピングまで手伝ってしまった。
「美味しい♪」
ナーナはボウルに残ったチョコレートを指で掬い、それをぺろりと舐める。
「仁も舐める?」
「いや俺は……」
そう言いかけて仁は何かを思いついたのか、指でチョコレートを掬い上げ。
「じ、仁!?」
何をされているのか、理解するには多少の時間が必要だった。
仁はナーナの唇にチョコレートを塗っていく。
「あの……?」
それから仁は戸惑っているナーナの唇をチュッと吸った。
「どうせならこうして食べた方が旨そうだからな」
「!!!」
絡め取るように仁は唇と舌でナーナを味わった。

Happy Sweet Valentine!

おあとがよろしいようで(笑)

不知夜月