1.あたたかな眼差し(風間仁)


1.あたたかな眼差し

「頭首こちらがB社の内部資料になります」
「置いておいてくれ」
顔を上げた仁とナーナの視線が交錯した。
(……あ……まただ)
仁の視線にナーナの胸がトクン、と高鳴る。

その眼差しを優しく感じるのは何故?

ナーナは仁の視線を感じる度自問していた。

鉄拳衆の中でも頭首直属の選りすぐりのラース隊に所属していたナーナ。
たまたま鉄拳衆の模擬戦を視察していた仁の目にナーナが留まった。
ナーナは風間流古武術の使い手であった。

━━━━何故彼女が風間流古武術の使い手なのか?

そう思った仁はすぐにナーナから話しを聞いた。彼女の話しを聞くうちに不思議と親近感を覚えた仁は、その場でナーナを自分の秘書に任命したのであった。

それから数週間。
ナーナは仁の秘書として三島財閥内に着々と自分のポジションを確立していった。

うずたかく積まれた書類の山がすっかり綺麗になっていた。仁の仕事の早さにナーナは目を丸くする。
「どうした?」
「いえ……あ……」
仁の問い掛けに自分がどれだけ彼を見つめていたのか気付いたナーナは、羞恥に顔を紅く染めた。
そんなナーナの態度を可愛いと仁は思う。

それはいつからだったか。
ナーナの自分を見つめる視線が艶のあるものに変わっていったのは。
気がついていた。
目が合うと頬を紅く染め視線を逸らすナーナに。

仁はフッと笑うと椅子から立ち上がりナーナへと歩み寄った。
「あ、あのう……頭首?」
肩が触れそうな程近い仁との距離。少しでも動くと身体が触れ合いそうだ。
「何だ」
仁は全く気にしていないようだった。
「あ……」
まただ。また仁の瞳が優くて胸が高鳴る。
(私一体どうしたの!?これでは頭首に……?)
仁の予想外の行動に明らかに戸惑っているナーナの様子に彼の口許が緩みそうになった。
しっかりしているかと思えばおっちょこちょいの所がある。見ていて飽きない。
殺伐とした中に身を置く仁にとってナーナはホッと一息つけるそんな存在だった。
「顔赤いぞ?」
「っ!?」
覗き込む仁。その近さにナーナは息を飲む。仁の整った目鼻立ち。太い眉の下にある瞳が真っすぐにナーナを見つめていた。
「頭首……近過ぎです……」
胸の鼓動が尋常じゃないくらい早くて何だか息苦しい。
「何か問題あるのか?」
口角を上げて笑う仁の顔が更に近づいた。

数センチの距離━━━━。

意識してやってるのか無意識でやってるのか分からない仁のその眼差し。
ナーナだけが知っているそのあたたかくて優しい眼差し。
(あなたの側にいるとこんなに胸が高鳴るのもきっと……)
「頭首、私……」
「何だ?」
「……あなたのその優しくてあたたかな眼差しが、」
「眼差しが?」
「あなたのその眼差しが、好きです……」
「!!!」
仁の瞳が見開かれた。

二人の距離は0センチ。

あたたかな眼差し

不知夜月