1.大晦日(風間仁)
【大晦日】
12月31日大晦日。
朝から慌ただしくナーナは動き回っていた。仁から見ると半分以上は無駄な動きだったが。
「次は何をすればいいの?」
「ゆで卵を黄身と白身に分けてそれぞれに裏ごししてくれ」
「はい」
ふたりで迎える始めてのお正月。
仁たっての希望でお節料理は一からの手作りに。
昔母親と毎年のように作っていたお節料理。
ひとりの時には忙しさも手伝いそんなことを思い出しもしなかった。
だがナーナと出会い時間を共有すると、不思議と思い出す母親のこと。
だから久しぶりに作ってみたいと思ったのだ。
幸い今年は戦争もなく平和な一年。だから仁は頭首として初めて三島財閥全職員に年末年始の休みを与えた。
エプロン姿の仁もなかなかカッコイイと見とれてしまう。
そんなナーナをよそに、仁は手際よく料理を作ってゆく。
筑前煮、昆布の煮染め、栗きんとん、なます等。あっという間に出来上がっていく料理。
「これは明日でいいよね」
「そうだな」
錦糸玉子を専用の型につめ冷蔵庫にいれる。
それから用意された重箱に食材をつめていった。
「結構な量が出来たね」
「どうせお正月はみんな集まるだろう?」
朝から始めたお節料理作りは、夕方近くに終わった。
「でもどうしてわざわざお節料理作ろうと思ったの?」
ようやく出来上がったお節料理を廊下の温度の低い場所に置きながらナーナはふと尋ねてみた。
別に自分たちで作らなくても今はお節料理は出来合えの立派なものがある。
それを使ったほうが楽なのに……。
「ナーナに風間家の味を知ってもらいたいと思ってさ」
思いがけない仁の答えに胸が高鳴る。
「仁……それって……!」
「さあな」
仁は足早にリビングに戻ってゆく。照れているのか耳が真っ赤だ。
ナーナはくすりと笑い仁を追いかけた。
胸がポカポカと温かい。
「じーん!!」
「!?」
何事だと振り向いた仁。ナーナはすかさず抱きついた。
「風間家の味もっと教えてね。私知りたい」
「ゆっくりと覚えてくれればいいいからな」
それに応えるように仁はナーナを抱きしめた。
出会って一年。
少しずつ変わってきたふたりの関係は、新しい一歩を踏み出そうとしている。
今年もあと数時間で終わろうとしていた。