童話のように(風間仁)

【童話のように】

王子様のキスでお姫様は目覚めましたーーーー。

ラースさんから連絡を受け急ぎ病院に駆けつけると、特別室のベッドに横たわる仁がいた。

「じ、ん?」

「今朝の会議の後急に倒れられて、そこから意識はなく昏睡状態が続いています」

仁の身体に取り付けられている様々な医療機器。

自発呼吸はしっかりしていているので、人工呼吸器はつけられていない。

「頭首のこの症状は、原因不明だそうです」

「……」

信じられなかった。
数時間前にはあんなに元気で、いつもと変わらない朝だった。

『今日は俺達の記念日だから、夜は外で食事でもしようか』

覚えていてくれたことが嬉しくて……。

「仁……」

彼の手をそっと握る。温かくて大きな手は、いつものように握り返してはくれない。

……仁。どうしたら貴方は目覚めるの?

不意に思い浮かんだのは、昔読んだ童話の絵本だった。
永い眠りについたお姫様を起こしたのは……。


童話なら王子様のキスでお姫様は目覚める。

それなら、お姫様のキスで王子様だって目覚めるはず。

私は乾いた仁の唇に、そっとキスをした。


不知夜月