願いはうたに(風間仁)

【願いはうたに】

「ねぇねぇ、これから木人神社の夏祭りに行かない」

「あっいいね〜行こう行こう」

「でも……」

「あんた風間くんが居なくなってから付き合い悪いし、暗いよ」

「ひどい言われようだね?」

「仁のことを簡単には忘れられないし、気持ちを切り替えられないよ」

「だからさ、コレ」

「?」

「あ…短冊だ」

「短冊?」

「知ってるかな?木人神社の夏祭りで、この短冊に願い事を書いて御神木に飾ると、願いが叶うんだって」

「へえ〜知らなかった」

「……」

「けじめつけなよ。もう一年でしょう?」

「そうだよ?このままじゃ宙ぶらりんだよ」

「うん……」


「ここだね」

「いっぱい飾ってあるね」

「私たちも飾ろう」

「うん」


「よしオッケー」

「私も終わった」

「私も」

「「私たちはね親友の願いが叶いますように」」

「ありがとう……」

「わわっ!泣かないで」

「で何を願ったの?」

「うん…あのね…」

「あ…これ和歌だ」


―――今はただ 想い絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな。


「これ百人一首?」

「うん……」

「そっか…。風間くんに直接伝えられたらいいね」


―――私はもうあなたへの想いを諦めます。でも、そのことをせめてあなたに直接会って伝えたい。人づてではなく、私の口から…。


彼女たちの想いをのせた短冊は、風に揺られ夏の夜空を彩ってゆく。

願いは歌に、

届けこの願いを。


***

小倉百人一首 左京大夫道雅の歌より。


不知夜月