節分

日本では立春の前日に『節分』という行事がある。
「鬼は外。福は内。」の掛け声と共に豆をまき、一年の無事を願う。
また自分の歳(数え年)の数だけ豆を食べると、その年一年間は無病で過ごせるといわれている。

それは日本の大切な風習――――。

今日は2月3日。
日本の暦では立春。
そして、節分の日である。

『Devil May Cry』にナーナが住み込んで半年が経った。
ナーナは家政婦としてバージル、ダンテのお世話をしている日本人である。

「〜〜♪〜〜♪♪」
ナーナは鼻歌を歌いながら事務所の黒檀の机の上に『豆』と『鬼面』を置いた。そこに座っていたダンテと電話に出ていたバージルは、何事かとナーナの顔を見つめる。
「なあナーナ、これは何だ?」
ひょいと赤い鬼の面を手に取り、ダンテはそれをクルクル回し始め、
「これは大豆か?」
バージルは言うなり豆を掴み口に運ぼうとした。
「あぁバージル!食べちゃだめだってば〜!!」
慌ててナーナは豆をバージルから取り上げるが、バージルは何故いけないのかと納得のいかない表情をしている。
「あのね、この豆は今夜“まく”の!」
「まく?」
「日本の風習に『節分』っていう行事があってね、2月3日に“鬼は外、福は内”という掛け声と共に豆を投げるの」
「それがどんな意味があるんだ?」
「一年病気にならず幸せに過ごせますようにという願いが込められているのよ」
「じゃあこれは?」
二人の話を興味半分で聞いていたダンテは、手にしていた鬼のお面をかぶっていた。
「それは“鬼の面”よ」
「オニ?」
「そのお面をかぶった人に豆をぶつけて幸せを願うのよ。鬼はダンテに決まりね」
ナーナはクスリと笑った。
「?」
「よく似合ってるわダンテ♪」
「決まりだな」
「何ィ――!?」
「(ダンテの意思はこの際無視して鬼になってもらおうっと)お願いダンテ」
上目遣いで甘えるような仕草。好意を持っているナーナに頼まれては断れないじゃないか。
「(全く、男ってヤツは……)ナーナがそう言うんならやるよ」
「ありがとうダンテ!」

――――――こうして豆まきは始まったのだか、ナーナはすぐに後悔する事になる。

「鬼は外!福は内!」
ナーナは遠慮がちにダンテに豆を投げるが、
「そんなんじゃ当たらないぜ?」
ヒョイヒョイと軽やかに豆をかわすので全く意味がない。
「もう〜ダンテ!それじゃあ鬼の意味が無いよ〜」
空しく宙を舞う豆たち。
「貸してみろ」
「えっ?」
二人の様子を見ていたバージルは、たまりかねたようにナーナから豆を取り上げた。
「ダンテに当てれば良いのだろう?」
「あ、うん……」
バージルの口元が微かに緩んだのをナーナは見逃さなかった。

とっても、嫌な予感がする。

「いくぞダンテ!!」
バージルの掛け声、それが合図だった。
バージルの投げた高速の豆をダンテは時間を操り避ける。シルバークイックだ。
バージルがゆっくりしか動けないのを良い事に、ダンテは自分の持っていた豆を思いきり投げつけた。
「!!」
バージルは辛うじて手にしていた閻魔刀で豆を弾いた。
「ダンテ!!」
「バージル!!」
二人は睨み合い……。
もはやそれは豆まきではなく、ただの兄弟喧嘩になっていた。
「はあ…っ」
ナーナは深い溜め息をついた。
目の前で事務所の机が、窓ガラスが、椅子が、無惨な姿になっていく。

「これでも喰らえ!!」
「甘いなダンテ!!」

二人の戦いは終わりそうにない。

もう二度と“豆まき”なんかするもんか!!

自分の認識の甘さを悔やみつつ、ナーナはそう固く心に誓うのであった。


---アトガキ---
この話はDMC3でダンテを操作している時、Styleを「QuickSilver」にしてゲームをしていた時に思いつきました。
二人が豆まきしたら、絶対に兄弟喧嘩になるんだろうなあ…と妄想が広がり書いたお話しです。
前サイトを作るきっかけとなりました初めての、言わばナーナの処女作になります。

不知夜月