十五夜
夜空を煌々と丸い月が照らしている。
今日は十五夜。
私は一人山の中で丸い月を見上げていた。
手に握ったススキの穂が夜風にゆらゆらと揺れている。
見渡しても樹や草が不規則に生えているだけ。
流石に夜の山は寒い。
―――事の発端はススキが何処にもなかったこと。
お月見をしようと祭壇を作り、団子、里芋の煮物、枝豆、茹で栗、そして御酒の用意は無事出来た。
しかし肝心のススキが何処を探してもなかったのだ。
私は諦めきれなくて探した結果―――――現在に至る。
「月は綺麗だけど……」
携帯の画面を見て圏外という文字に溜息をついた。
不思議とバージルとダンテの顔が浮かぶ。
「二人共心配しているよね?」
一応書き置きはして来たけど、私がこんな山の中にいるなんて二人共思わない。
グウゥゥ……。
お腹の虫が啼いた。
最後に食事をしたのは何時間前だろう?
そんな事を考えていたら何だか眠くなって来て、いつしか私は眠ってしまっていた。
面倒な依頼を終えて帰って来たバージルとダンテは、事務所に彼女の姿がないのに気付いた。
時計の針はPM9:00を指している。
「なあバージル。あいつ『ススキを探しに行く』って遅くねぇか?」
「そうだな」
「何かあったのかねぇ?」
「あいつは方向音痴だ。ひょっとして迷っているんじゃないか?」
二人は顔を見合わせた。
「「全く世話が焼ける!」」
どのくらい眠っていたのだろうか?
眠りから覚めても、当たり前だけど、やっぱり情況は変わっていない。
私はどうなってしまうのだろう?
ふと考える。
二人が探してくれるとは思うけど。
こんな人里離れた山奥にいるって事を二人は分かってくれるかな?
もし二人に見付けてもらえなかったら……?
不安な事ばかりが心を過ぎる。
一人になって感じる不安、淋しさ。
「バージルとダンテに会いたい」
気付かないうちに口から零れる言葉。
浮かぶのは二人の顔だった。
ガサガサ……ガサガサ……。
草を掻き分ける音が聞こえてきて、私は息を呑んだ。
そういえばこの辺りは、野性の熊が出没するって山を管理しているおじさんが言ってた。
段々と近付く音に、私は立ち上がり近くの草むらに体を隠す。
「こんな所に本当にいるのかよ」
「管理人がアジア系の女の子と会ったと言っている」
草を掻き分け現れたのは。
「バージル!ダンテ!」
二人の姿を確認すると、私は堪らなくなり駆け出していた。
「馬鹿が!心配かけて」
開口一番にバージルの口から飛び出した言葉。
「そんな言い方ないだろう?」
優しく私を庇ってくれるのはダンテ。
私は二人の腕の中にいた。
抱きしめられている腕が温かい。
バージルが心配してくれてる気持ちも温かい。
「それよりお腹空いてないか?」
ダンテが紙袋をひょいと私に差し出た。
その匂いに私のお腹の虫が盛大に啼いた。
私の隣にはバージルとダンテが座っている。
「美味しい〜!」
「だろう?」
「色気より食い気だな」
ダンテの大好きなファストフードのハンバーガーを片手に、三人で見上げる夜空。
ダンテと私はハンバーガーに噛り付いていていて、
バージルはジャンクフードが初めてらしく、小難しい顔をしてハンバーガーと睨めっこをしていた。
大好きな二人と一緒。
こんなお月見もありかもしれない。
そんな十五夜の出来事だった。