永遠に君を愛する�@
――――ずっと忘れていた。
色褪せた写真が忘れていた想いを呼び起こす。
心の奥に、そっとしまい込んだ想い。
あの日お前と俺は出会ったんだな。
忘れていて、ごめん。
俺の側に、お前はいたんだな――――。
長閑な春の昼下がり。
スラムにある便利屋『Devil May Cry』では、ダンテとバージルがそれぞれにくつろいでいた。
今日は特に仕事の依頼もなく二人揃って事務所にいる事は珍しい。
ダンテは黒檀のデスクに足を乗せ、好物のピザを片手に雑誌を読んでいる。
一方のバージルは二人共有の――とは言っても、殆どバージル専用になっているが――本棚の整理をしていた。
「ん……これは?」
ふとバージルは壁と本棚の間に挟まっている、『何か』に気がついた。
「……っ」
狭い隙間に手を入れやや強引にそれを掴む。
(これは?)
手にしたそれは一枚の色褪せた写真だった。今よりも若い頃であろうダンテと彼の隣で微笑む美しい黒髪の女性との写真。
(東洋人か?)
二人共今現在まで家族や自身の写真を残してはいない。幼い頃は母親がよく写真を撮っていた記憶がある。
それらは今となっては現存しない物で、現在唯一残っている写真は、ダンテのデスクの上に飾ってある母親の写真だけであった。
「ふむ」
バージルは少しの間写真を見つめていたが、すぐ考えがまとまったのかダンテの元へ歩いて行った。
「◯▼★☆が▲〜〜♪」
雑誌を片手に鼻歌交じりに上機嫌なダンテ。
「おい、ダンテ!」
本来ならかかわり合いたくないバージルだったが、これが気になるのだから仕方がない。
「あん?」
ダンテは鼻歌を止め雑誌から顔を上げた。
「これが本棚の裏に落ちていた」
バージルは写真をダンテに差し出す。
「!!」
差し出しされた写真にダンテはハッと息を呑んだ。
……ダンテ。私ね…。
声が聞こえる。あの日交わした言葉が、
忘れかけていた記憶が、想いの時間が、ゆっくりと巻き戻って行く。
「くっ!!」
赤いコートを羽織り足早に事務所から出て行こうとするダンテを、
「おいダンテ!!」
バージルは彼の右肩を掴んで止めた。
「……あんたも来るか?あいつの事を知りたいんだろう」
「ああ、そうだ」
それからいくつかのやり取りの後、二人は事務所から出て行った。
こうやって二人で肩を並べて歩くのは何年ぶりだろうか?
途中にある花屋で、ダンテは真っ赤な薔薇の花を店にあるだけ買った。大輪の薔薇の花束に行き交う人たちの視線が注がれる。
二人は特に会話をする訳でもなく、ただ黙々と歩いていた。
太陽は既に傾き始め、空を、街並みを赤く染めている。
「なぁ、バージル……」
「何だ」
「あんたは誰かを好きに……いや、誰かを心から愛した事があるか?」
「は?何を言っているんだ!?」
事務所を出てから今まで沈黙していたダンテから発せられた予期しない質問に、バージルは正直面食らった。
「なぁ、どうなんだ?」
答えを急かすようなダンテの、その眼差しは真剣だった。
「俺にそんな経験はない」
父親が亡くった後すぐに母親は無惨にも悪魔に殺された。命からがら逃げたバージルは、はぐれた双子の弟ダンテも殺されたものだと思っていた。
力があれば!
幼かったから、弱かったから守る事が出来なかった。
だから力が欲しい。
強大な力を!!
その一心で生きていたバージルは、自分自身の事だけを考えて生きてきた。
だから誰かを好きになるなどそんな事を考えた事はなかった。
「お前は……ダンテ。……お前はあるのか?」
今度はバージルがダンテ訪ねる。
ダンテはバージルの問いかけに小さく頷いた。
「…………」
「あの写真は5年前。そう『Devil May Cry』を開く前であんたに会う前だ。俺とあいつ、ナーナと出会ったのは……」
ダンテは静かに語り始めた。
遠い日の記憶を。
懐かしい想い出を。
忘れてた想いを。